• 「俺にはせいぜい働きやすいよう

    「俺にはせいぜい働きやすいように手助けぐらいしか出来ん。事情を聞いたからには俺も何か協力出来る事があるならする。

    今日はこれで帰るわ。話してくれてありがとう。」

     

     

    眠る三津の顔を見てから一之助は立ち上がった。文は膝を貸して見送れないからすみとフサが見送りに出た。https://classic-blog.udn.com/3bebdbf2/180458237 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/4/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-89.html

     

     

    「多分事情を知った一之助さんには三津さんから色々話してもらえると思う。仕事中は傍におれるの一之助さんやけぇ頼りにしてる。」

     

     

    すみの言葉に少し照れたがそれを仏頂面で隠して,またと一言だけで帰路についた。

     

     

    「すみちゃんそんなに入江さん取られるの嫌なん?」

     

     

    居間に戻って文から掛けられた第一声がそれですみは心底嫌そうな顔をした。

     

     

    「そんなんやないっちゃ。確かに今回の兄上は今までに見たことない表情しよるのも分かったけど,何て言うか……それが気持ち悪い。」

     

     

    「嫌いやけぇ三津さんみたいな子が嫁に来るのが腹立つんやな。」

     

     

    「それや。あの変態がこんな子と幸せになるのが許せんそ。」

     

     

    自分でも腑に落ちたわと納得の表情を浮かべた。流石幼馴染,よく分かってるなと口角を上げた。

     

     

    「文ちゃんは桂様許せんのよね。」

     

     

    その問いに文は大きく頷いてフサも同じだと頷いた。

     

     

    「別にあの色男が何人女泣かせようと知ったこっちゃないけどここまで巻き込んで色んなもん犠牲にさせといて何の責任も負えんような男や。見損なったわ。」

     

     

    「でも姉上は自分が被害者だなんて思っちょらんのです。あくまで支えきれなかった自分が悪い。相応しくないのに傍に居続けた自分が悪いと責めるのです。」

     

     

    フサはそれが悔しいと唇を噛んだ。

    自分は被害者であいつは酷い男だと思えたらもっと早く吹っ切れられるはずなのに。

     

     

    「三津さんは桂様を嫌いにはなれん。嫌いになりたくないから切り離した。いい人のままで思い出にしたいんよ……。」

     

     

    人を恨まない三津らしいと文は悲しげな笑みを浮かべた。その分どれだけの傷を背負ってきたのかと考えるだけで胸が痛い。

     

     

    「別に愚兄との答えを探さんでも周りにいい人おらんか目を向けたらいいのにね。」

     

     

    「それよ。でも私らみたいな小姑がついとるけぇ男からしたら手出しし難いかもな。」

     

     

    それは違いないとすみは文と笑いあった。

    翌朝いつもの如く記憶がないまま目覚めた三津は文に向かってご迷惑おかけしましたと詫びで一日を始めた。

     

     

    「体調大丈夫なん?」

     

     

    店に行くとやはり一之助にも心配された。だけど体調に問題はない。記憶がないのが問題ですと笑って,何か失礼はなかったかと聞いた。

    すると一之助が硬直した。黙り込んでしまった一之助を不思議そうに見つめていると,別にの一言で顔を逸らされてしまった。

    それを見て何かはやらかしたんだなと思って溜息をついた。

     

     

    店に来る客達は予想通り三津に入江といい時間を過ごせたかとこぞって聞きに来た。

    下世話な意味だと理解していた三津はのんびり過ごせましたと微笑ではぐらかした。

     

     

    その会話を聞く度に一之助の頭の中で胸の一件を思い出してしまい,三津を直視できなくてなるべく離れた位置にいた。

    正確には三津のことは見れる。見れるがその視線があからさまに胸に行くので見ないようにしている。

     

     

    「一之助さんお茶のお代わりを……。」

     

     

    突然本人の声がして目の前に顔が現れたから思わず仰け反った。

     

     

    「お茶な。はいはい。」

     

     

    適当な返事をしてくるりと踵を返したところで右手首をいきなり掴まれた。

     

     

    「何!?」

     

     

    「血!血が出てます!鼻血!」

     

     

    咄嗟に出た大声に対抗するかのように三津も声を張り上げて一之助の鼻を指差した。

     

     

    「は?」

     

     

    まさかと思いそっと手を当てると手には血がついていた。

     

     

    「一之助さん体調悪かったんですね。気付かなくてごめんなさい。しずさん!一之助さん休ませてください!」

     

     

     

    鼻血ぐらいで大袈裟なと思ったが,今日は仕事に集中出来ない。大人しくしずに促されるまま奥の居間で休ませてもらうことにした。


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