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だが彼もまた上洛を果たしておらず
だが彼もまた上洛を果たしておらず、加えて松永・三好一党によって操られる将軍であった。
しかしこれによって、義秋の焦りと幕府再興への意欲が高じたのは言うまでもない。
「──この月の十五日には、義秋様もようよ元服の儀を受けられ、御名の『秋』の字が不吉じゃからと『昭』の字に改められたそうな」https://postheaven.net/0v8cqk1ash https://www.moneyformybeer.com/?p=9573 https://freelancer1.bloggersdelight.dk/2024/08/08/%e4%b8%8b%e6%ae%b5%e3%81%ae%e4%b8%ad%e5%a4%ae%e3%81%a7%e6%8a%ab%e9%9c%b2%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b/
信長は下段に向かって一本指を出し、宙で昭の字を書いた。
「ま、義秋がになったところで、さして運が開けるとも思えぬがな」
信長は皮肉混じりにうと
「直々に義昭様のご意向を伝えるべく、この文の主は儂との対面を求めてきておる。 ……はてさて、どう返答するべきかのう」
言いながら、どこか悠長な顔付きで腕を組んだ。
心は既に決まっているようである。
「殿。ながら──」
「おお、勝家か。申してみよ」
「は、その者と一度お会いになるべきかと存じます。義昭様を大義名分として京へ上れるのであれば、我らにとってはまさに好都合。
織田家が天下に覇を唱えるという殿のご意向を実現させる為には、此度の上洛は必要欠くべからざるものかと」
信長は我が意を得たりと、満足そうに頷く。
「左様か。…、筆頭家老であるそちの存念も聞こうか」
「畏れながら、義昭様を奉じて都に上ることにつきましては、某も賛成にございます」
「ほぉ、そちもか」
「以前とは異なり、織田家はこの美濃の地を平定し、加えて北近江の浅井氏と同盟を結びましたる今、京への道筋も確保出来ておりまする。これを使わぬ手はございませぬ」
秀貞の言葉に、稲葉良通も同意そうに首肯する。
「左様。また上洛によって、都で荒れ狂う松永・三好勢を一掃し、義昭様を将軍の座に据えることが叶えば、
幕府に代わって織田家がの実権を握るという筋書きも、決して夢ではございますまい」
「さすがは美濃三人衆の頭、大胆なことを言いおる」
信長が小気味良さげに笑うと
「されど、殿。お会いになるにしても、その文の送り主はまことに信用のおける者なのでしょうか?」
ふいに長秀が怪訝な面持ちで訊ねた。
「確か以前の折は、信昭様の御側の細川藤孝殿が使者となって殿に上洛の旨を申し入れられましたが、此度は朝倉殿の家臣を寄越されるとは…」
「の匂いでも感じるか?」
「そ、そこまでは申しませぬが、どのような素性の者なのかと思いまして」
「案ずるな、使者は此度も細川殿じゃ。信昭様が朝倉に身を寄せておられる縁から、自身はその仲介を任されたと文にもある」
「して、その者の名は?」
「名? ──そうじゃのう…確か名は…」
大雑把に読んで記憶に残っていなかったのか、信長は折り畳んだ文を再び広げると
「。明智光秀と申す者だ」
文の末尾に書かれた名を読み上げた。
すると良通は「ほぉ…」と小さく呟くなり、その強面に微かな笑みを湛えた。
「光秀殿。それはまた、懐かしき御名にございますな」
「何じゃ良通、この者を知っておるのか?」
「知っているも何も、かつての美濃守護・土岐氏の支流である明智家の出の者にて、今は亡き道三公にも共に仕えていたことがございます」
「の親父殿にじゃと !?」
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