• 『 この赤子は儂の血を引く

    『 この赤子は儂の血を引く、紛れもなき織田の姫。それも、本来ならば長女である徳姫よりも重んじられねばならぬ、正室所生のにございます。 手足に障りがあるからというだけで、織田家の嫡女を、素性も分からぬ者々の手に預けるような真似は、断じて出来ませぬ 』 『 されど!そなたは先程 “ それはならぬ ” と、お濃殿の申し出をね付けられておったではないか!? 』 『 それはお濃が、姫には乳母も侍女もいらぬなどと、勝手なことを言い出した故にございます。 我が嫡女として産まれた以上、姫にはるべき乳母と、専属の侍女を付けてやる所存にございます 』https://6190d4c180819.site123.me/blog-1/i-ekaterina-recently-keynoted https://rodney.bravesites.com/entries/general/%E6%BF%83%E5%A7%AB%E3%81%AF%E6%80%9D%E3%82%8F%E3%81%9A%E9%8F%A1%E5%8F%B0%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AB%E6%AB%9B-%E3%81%8F%E3%81%97-%E3%82%92%E7%BD%AE%E3%81%8D https://debsy.substack.com/publish/post/147824425    報春院に向かって、頷くように頭を垂れると 『 故にお濃。そちが独りで育てて参るなどいう、突拍子もない考えは捨てよ。いらぬ覚悟じゃ 』 『 殿… 』 『 この姫は織田家が、父たる儂がしかと養して参る故、安堵致せ 』 濃姫の心の憂いを拭ってやるように、信長は優しく笑んだ。 濃姫は嬉しくて堪らなくなり、信長と赤子の面差しを交互に見やりながら、うっすらと涙を滲ませる。 三保野も思わず破顔一笑して 『 姫様──よろしゅうございました!ほんによろしゅうございましたな 』 と、嬉しそうに姫の横顔に告げた。 『 三保野… 』と濃姫も深く頷き返す。 信長の決断に喜びを露にする二人に対して、報春院は苦虫を噛み潰したような表情で息子をめ付けていた。 『 …信長殿…。そなた…どういうおつもりじゃ? 』 『 何かご不満がございますか? 』 『 左様なこと言わずとも分かろう! そなたは、織田家の行く末を、名誉を、何と心得ておるのじゃ!? 』 『 無論、織田家当主として、何よりも守り抜かねばならぬものと心得ておりまする 』 『 ならば何故に左様な──っ 』 『 この赤子の存在が、織田に悪しき影響を与えることはないと思うたが故にございます』 報春院は『 何っ 』と言う顔で、息子の次なる言葉を待った。 『 申し上げた通り、赤子は岐阜の城で育てて参りまするが、その存在はこれまで通り、表には伏せて参りたいと存じまする。 元よりお濃の懐妊も出産も密事だったのです。今更、様々な言い訳を並べ立ててまで、子を世に出そうとは思いませぬ 』 信長は毅然として言うと 『 お濃も、この旨に異存はなかろうな? 』 再び濃姫に目をやった。 濃姫は一瞬 うような様子を見せたが、そうなることははなから覚悟の上であった。 我が子から引き離されるくらいなら…。 この子が好奇の目に晒されるくらいなら…。 世の汚辱から我が子を守ってやる為ならば…。 自分はどんな我慢とていとわないと、濃姫は強い思いで頭を垂れた。 『 はい──。それがこの子の為、ひいては織田家の為になるのであれば、私にやはございませぬ 』 『 …お濃殿! 』 『 母上。 母上はこの赤子の処遇については、父である儂に託されると仰せになられた。その儂が決めたことに、今更異存を申されるおつもりですか? 』 『 それは… 』 『 先程も “ この赤子を生かすも殺すも、そなた様の自由じゃ ” と左様仰せになられた 』 『 …… 』 『 武家のおなごが一度口にした言葉に、よもや二言などはございますまいな? 』 静かに告げられる信長の言葉に、報春院は思わず鼻白んだ。 苦し紛れにキッと信長を睨むも、相手は微塵も動じない。 報春院は奥歯を強く噛み締め、短くも重々しい溜め息をくと 『 勝手になされよ… 』 呟くように告げてから、足早に座を辞した。 思い詰めたような面持ちで姑の背を見送る濃姫の横で、信長はふっと鼻息を漏らす。 『 相も変わらず頭の固いお方じゃ 』 『 …お引き止め致さなくて、良かったのでしょうか? 』 『 気に致すな、いつものことじゃ。あの母が、はなから理解して下さるとは思うてはおらぬ 』 信長は想定内とばかりに言うと、に、寝かせられている赤子の側に寄り、 のように真っ赤な頬に、そっと指先で触れた。


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