「お濃殿が我が手で子供を育てたいと申し時は、わらわも驚き入った。鬼の子を織田家で抱え込むつもりなのかと、散々反対致したが、
お濃殿もなでのう。 …出来ればわらわとしては、問題の種は早々に始末し、事を円滑におさめたいと思うておったのじゃが」
始末という言葉に、小さくなっていたお菜津がサッと顔を上げる。
「では、ま、まさか、姫君様は──!?」
「お菜津殿。案ずるには及びませぬ。お産まれになられた姫様は、ご健勝にお過ごしにございます」
焦り顔のお菜津に千代山は優しく微笑みかけた。
「…左様に…ございますか」
吾子が無事と知り、お菜津はほっと胸を撫で下ろす。
「生かすならば生かすで、せめて他家へ預けるか、尼寺へ入れよと言うたのじゃが、お濃殿がいずれもと致さぬ構えでのう」https://truxgo.net/blogs/78402/1604034/wo-men-da-duo-shu-ren-dou-bu-tai-zai-yi-ru-he-qu-ying https://www.discuss.com.hk/viewthread.php?tid=31668076&extra=&frombbs=1 https://88db.com.hk/Business/On-Their-Website/ad-5921163/
「であれば大方様。産まれた姫様は今、どちらにおられるのですか?」
古沍の問いに、報春院は一瞬 憂鬱そうな表情を浮かべた。
しかし、いずれは話さねばならぬこと。
報春院はあさっての方向に視線を向けながら、やがて重々しく口を開いた。
「あの姫ならば、今頃は──…」
一方、濃姫がおわす京・二条衣棚の妙覚寺では、境内にある長い長い渡り廊下を、寺小姓たちがそれは丹念に拭き掃除をしていた。
寺院の清潔を保つことも修行の内と心得、廊下の柱や欄干に至るまで、全て余念なく磨き上げていく。
やがて、小姓たちが廊下の床を鏡の如く磨き上げ「ふ~っ」と、額に湧いた汗を袖で拭っていると
「──おどき下され!おどき下され!」
廊下の奥から、井戸水の入ったを手にした三保野が、脱兎の如く駆けて来た。
三保野は渇いた素足で、バタバタと小姓たちが磨き上げた床板の上を走ってゆく。
廊下にはくっきりと三保野の足跡が残り、その後には、盥から零れ落ちた僅かな水が点々と続いていた。
小姓たちはそれを見て「…またや」と溜め息をき、口々に愚痴を漏らし合った。
「見や、あのお人のせいでまたやり直しや」
「あのお人が参られてから、ろくなことがないなぁ。昨日は手拭いの切れ端、今日は盥の水かいな」
「の離れと本堂をいつも行ったり来たりして、いったい何をしてはるのやろ?」
「詳しいことは御住職様しか知らんようやけど、聞いたところによると尾張、美濃を治めておられる織田家の縁の方やとか」
「織田家の縁の方って、誰?」
「さぁ、そこまでは知らんけど」
「でも知ってるか? あのお人らがおられる竹林の離れでは、随分と恐ろしいことが起きているらしいで」
「恐ろしいって?」
「夜に離れの近くを通りかかると、どこからともなく “ ンギャー、ンギャー ” と、のようなうめき声が聴こえて来るらしいわ」
「ああ、それなら聞いたことがある。何でも、離れの客人が夜な夜な獣に化けて、奇声を発しておるのやとか!」
「まさか、それは幾らなんでも考え過ぎやろ」
「いや。御住職様も、竹林の離れにはゆめゆめ近付いてはならぬと申しておったし、獣に化ける人間を、訳あってっているとも考えられる」
「……そんな、阿呆なこと…」
小姓たちは三保野が去って行った廊下の彼方を見つめながら、小さく身震いするのだった。
周囲が竹林に取り囲まれた寺の離れ。
その一室では、の小袖の裾をたすき掛けにした濃姫が、三保野の帰りを今か今かと待っていた。
程なく三保野が、先程と変わらぬ慌ただしさで部屋に入って来て