「茶室へ向かう途中だったのであろう!? 何を突っ立ておる、早よう案内致せ!早よう!」 報春院はやや赤らんだ顔を俯けると、着物の裾を翻し、千代山と共にそそくさとその場を離れていった。 濃姫は渡り廊下の中央に立ち尽くし、長らくそれを見送っていたが、ふいに胸の中に溢れるものがあり、その清廉な面差しに穏やかな笑みを浮かべた。 これはあくまで姫の推測に過ぎないが、きっと報春院は、初めは本当に信長を嫌っていたのだろうと思った。 誇り高く教養もある彼女は、激しい気性で何事にも奇抜な振る舞いの絶えぬ息子を、どうしても受け入れる事が出来なかったのであろう。...
Lire la suiteすると報春院は濃姫を一度睥睨するように見つめてから、ふっと、吐息を漏らすような淡い微笑をその口元に浮かべた。 「何故か?そのような事は訊くまでもありますまい。信長殿は我が意に沿わぬ御子だからです」 濃姫は瞬時に目を瞬かせた。 「そのような事 …… 本気で仰っているのですか?」 「気性も荒く、行儀も態度も悪い、その上尾張一の荒くれ者じゃ。私の言うことなど何一つ聞かぬような子を、どうして好きになれようか !? 」 「されど、実の母と子をならば分かり合えるものがきっとあるはず!」 「今更あの子と何を分かり合えと申すのです。信長殿は、私という水から生まれ出た油じゃ。一生溶け合う事も混ざり合う事もないのです!」...
Lire la suite「そのように声をお荒らげになられますな。 … おなごたちも見ております故」 濃姫は背後の侍女たちを一瞥して言った。 「聞きたい者は聞けば良いッ ── 。何が “ 叔父上を殺めるのであれば、時期を見計ろうてもっと上手う事を進める ” じゃ! https://kiya.blog.jp/archives/25478081.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/08/10/003734 https://kiya.blog.jp/archives/25478087.html...
Lire la suite「母上、それにつきましては──」 「いいえ、良いのです、分かっておりまする故。那古屋城を一門の誰ぞに与えでもしたら、いつ内紛を起されるか分かったものではありませぬからな。 ましてや信光殿のように、尾張下二郡と那古屋城を得、信長殿に並び立とうとする程の勢力を持たれたお人ならば、そなた様もさぞや御脅威と感じられた事にございましょう。 少なくとも家臣の手に預けていれば、那名古城は信長殿の手中にあるも同然。加えて下四郡がそのまま手に入ったとあらば……、https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202407230000/...
Lire la suite濃姫はサッと顔を上げると、信勝や土田御前に「少し失礼を致します」と告げ、その場を中座した。 夫を出迎えようと、濃姫が城の長廊下を足早に進んで行くと 「──殿っ!」 焦りの形相で駆けて来る信長と鉢合わせた。 知らせを受けて大急ぎでやって来たらしく、微かに冷気の残る季節だというのに、信長は真夏のように汗だくだった。 「濃!親父は!…親父は無事か!?」 「意識はございますが、大変危険な状態でございます」 「親父はどこにおる!?」 「案内(あない)つかまつります」 濃姫は素早く踵を返すと、信長を連れて元来た道を戻り始めた。...
Lire la suite父も無事、そして夫も無事。 その上 両者が何の蟠(わだかま)りもなく会見を終えたのであれば、姫にはもう言う事はなかった。 ただただ“良かった”と、そう思うばかりである。 状況が状況でなかったら嬉し涙を浮かべ、信長の帰城を声に出して喜ぶところであったが 「今宵は寝てはならぬ!寝てはならぬぞ濃!あはははは」 「……」 どうやら、妻としての役目を果たす方が先のようであった。https://www.easycorp.com.hk/blog/complete-guide-company-incorporation-in-hong-kong/...
Lire la suite座敷の外に控えている信長の従者たちは、思わず緊張の面持ちになって様子を窺っていたが、無論何事も起こらない。 信長は飲み干した杯を膳の上に置くと、今度は自らが銚子を手に取って 「どうぞ、親父殿も一つ」 と、道三の杯に一献傾けた。 「これは忝(かたじけ)ない」 有り難く御酒を頂き、信長と共に、出されていた湯漬けをさらさらと食すると 「──ではな、婿殿。また近いうちにお目にかかろう」 道三はもはや成すべき事は成したとばかりに、早々と席を立った。 これにより、舅と婿の緊迫の初対面は、結果として滞りなくお開きとなったのである。...
Lire la suiteが、途端に 「無用じゃ!下がっておれ!」 道三の太い嗄れ声が座に響き渡り、家臣たちは慌てて身を引いた。 「──何か、お気になる事でもございましたか?」 信長が畳の縁に視線を落としながら、淡々とした面持ちで訊ねる。 道三は自席に着きつつ 「いや何、儂を年寄り扱いしてか、膝掛けなどを運んで来ようとする小姓がおった故、叱りつけてやったじゃ。 …おお、あの者、慌てて奥に引っ込みおったわ」 如何にも芝居くさい口調で語りながら、誰もいない奥の間の方へ目をやった。 「それはそれは──。されどそれとて、山城守様のお身体を気にかけての事。どうぞ、その者をお咎めになられませぬよう」...
Lire la suiteその頃 濃姫はというと、自室の前庭に出ていつもの薙刀の稽古に勤しんでいた。 「ぃやー!!」「とぉー!!」と声を上げながら、右へ左へ、前から後ろへと一心不乱に薙刀を振り回している。 それは最早稽古というよりも、目の前の不安や憂さを振り払おうと、懸命に藻掻いている様でもあった。 そんな濃姫を気にかけて https://classic-blog.udn.com/3bebdbf2/180760349 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/6/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-99.html...
Lire la suiteここで道三は 「せっかくの“うつけな”婿殿との会見じゃ。少しは遊び心もなくては面白くなかろう」 と、七・八百人ほどの古老の者たちに肩衣(かたぎぬ)に袴姿の正装をさせて、寺の御堂の縁にずらっと居並ばせた。 やがてここを通るであろう信長に、この粛然さ、品の正しさを見せ付けて驚かせてやろうという魂胆である。 そこへ光秀が駆けて来て、道三の足元に素早く控えた。 https://www.liveinternet.ru/users/johnsmith786/post506035304// https://www.bloglovin.com/@johnsmith4486/12706950...
Lire la suite