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ここで道三は 「せっかくの“うつけ

ここで道三は 「せっかくの“うつけな”婿殿との会見じゃ。少しは遊び心もなくては面白くなかろう」 と、七・八百人ほどの古老の者たちに肩衣(かたぎぬ)に袴姿の正装をさせて、寺の御堂の縁にずらっと居並ばせた。 やがてここを通るであろう信長に、この粛然さ、品の正しさを見せ付けて驚かせてやろうという魂胆である。 そこへ光秀が駆けて来て、道三の足元に素早く控えた。 https://www.liveinternet.ru/users/johnsmith786/post506035304// https://www.bloglovin.com/@johnsmith4486/12706950 https://johnsmith123.pixnet.net/blog/post/154508716「殿──」 「おお、光秀。…どうじゃ、見つかったか?」 「はい。少々古びてはおりまするが、ちょうど寺までの道筋に手頃な小屋が」 「それは重畳。──さてさて、美丈夫と噂の我が娘婿の面構え、まずは遠目からお拝ませていただくと致そう」 道三は余裕たっぷりにほくそ笑むと、光秀の案内のもと、正徳寺から程近い町外れの小屋へと赴いた。 殆んど物置と言っても過言ではないその古びた小屋は、普段は民たちが共同で使用しており、 中には野良仕事で使っているのであろう藁や肥料、鍬や鎌などの道具類で溢れている。 道三はそんな雑然とした小屋の中に、光秀と数名の侍従たちを伴って入ると、南側に設けられた小さな格子窓を僅かに開いた。 そこからは、正徳寺へと続く長い長い一本道が窺える。 「程なく、信長殿の行列がこの道に差し掛かる時分にございます」 光秀が告げると 「左様か。……まさか婿殿も、かような所に舅が潜み、己を下見にやって来ている等とは夢にも思うまいな」 道三はその脂ぎった顔に冷笑を浮かべた。 「光秀よ」 「はい」 「うつけと嘲られし婿殿を、わざわざこのような所に隠れて偵察するとは、情けないジジイじゃと思うであろう?」 「まさか、滅相もございませぬ。同盟相手たる信長殿が真のうつけか否かは、斎藤家の行く末に関わる一大事。 万が一にも殿の眼鏡に叶わぬ時には、この地が戦場と化すやも知れぬのですから、気が焦ってしまうのも無理からぬ事にございます」 「利口な事を申しおる。……じゃが儂が焦っているのは、それを気にしての事ばかりではない」 「 ? 」 「期待をかけておるのじゃ」 「期待?」 「世間では大うつけと謗られながらも、あの虎の信秀が最後まで己の嫡男と認め、平手政秀が生涯忠誠を尽くし、そして帰蝶が三国一と評した、織田信長という男の蓋然性にな」 「…殿」 「我ながら子供じみた期待を寄せているとは思うが、こればかりは理屈ではないのだ光秀。 一介の僧の身から、商人を経て武士となり、美濃の国主にまで上り詰めた男の、直感というやつよ」 そう言って、目尻に深い笑い皺を浮かべると 「お…、噂をすれば影じゃな」 道三は格子窓の先に視線を送りながら、渇いた唇を軽く舌で湿らせた。 光秀や他の侍従たちもすかさず格子窓の側に集まり、目を凝らした。 格子の向こうに、長い長い信長の行列が、正徳寺を目指して整然と進んで行く光景が見える。 若き徒兵(かち)衆から始まるその行列は、その後に弓兵、鉄砲隊、騎馬隊、槍隊と続き、 確認出来る限りでも、ざっと七・八百人あまりが信長に陪従しているものと思われた。 「これはこれは、何とも賑々しき隊列よ」 道三は最初こそ余裕綽々であったが 「ま、待て…!兵らが手にしておる武器の数、多過ぎはしまいか !?」 と、老眼を腕で擦った。

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