『 殺す気じゃ…。父上様は殿との会見に事寄せて、殿のお命をお取りになる気なのじゃ。
お義父様が没し、同盟の要であった平手殿が亡くなった今、もはや美濃側に恐れるものなど何もない。
嗚呼…父上様。今こそ尾張一円を奪う好機とお思い召されたか! 支えを失った殿を、攻めるなら今じゃと!?』 https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/154282879 https://carinacyril786.e-monsite.com/blog/--13.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/89c788f1-9ada-82da-8586-2b6a10f1ba65/sE4STrpKxLSxy9-zf9dYUxKQ_67sLwxvjH8EMM2uVknky1GpGqERy_N5aQ
濃姫は真っ青になった。
“ただの婿と舅の会見”。
今の姫には、そう楽観的に思う余裕などまるでなかった。
我が父と、我が夫。
自分が愛する男たちが、共に刀を抜き合い、肩や腕に傷をつくりながらも懸命に相手に斬りかかってゆく…。
濃姫には、そんな血生臭い想像しか出来なかった。
「して、どうなったのじゃ!?」
「は?」
「“は”ではない! 殿は無論、この会見をお断り申したのであろうな !?」
「いいえ。殿は会見をご了承あそばされました」
「何じゃと…!?」
濃姫は思わず愕然となった。
我が夫は確かに優れた才を持っている。
しかし、道三にはあの信秀ですら勝てなかったのだ。
道三が全力で向かって来たら、信長とて──
「いけないっ!」
と叫んで、濃姫は立ち上がった。
「三保野、殿はいずこにおられる !?」
「…ご、ご自身のお部屋かと…」
「左様か。──反物を、全て片付けておくよう」
濃姫は侍女たちに告げると、サッと打掛の褄を引き、衣装部屋から去って行った。
一方 道三との会見を受け入れた信長は、自身の御座所の居間で、暢気にも武具の手入れをしていた。
刀、弓、槍、鉄砲など、特に愛用している品々を居間の下座に広げて、一つ一つ丁寧に磨いている。
美濃の蝮から対面の申し出があったというのに、その顔には不思議なくらい緊張感がなかった。
そこへ濃姫が足早にやって来て
「──失礼致しまする!殿はおられま…」
「気を付けよ!!」
部屋の敷居を越えようとした彼女を、いきなり信長は一喝した。
濃姫が「お!」となって部屋に踏み入れようとした足を引くと、その下に鉛玉やら鏃(やじり)やらが幾つも散らばっていた。
「その辺りのは、まだ整理も手入れもしておらぬ。踏み荒らすでないぞ!」
「…は、はあ…」
姫はそれらを踏まぬよう、足元に気を配りながら入室すると
「お伺い致したき儀があり、まかりこしました」
信長の傍らに腰を据え、端然と三つ指をついた。
「そなたが参ったという事は、此度の蝮殿の話か?」
「御意にございます。──会見の話、何故にお断りになられませなんだ !?」
「断る理由がいったいどこにある?」
信長は鉄砲を磨きながら、しれっとした顔で言う。
「せっかくそなたの父上が儂に会いたいと言うてくれておるのじゃ。断る方が無礼であろう」
「今は左様な礼儀などどうでも良いのです!あなた様のお命に関わる事なのですよ !?」
「はてさて、儂の命とな?」
「おとぼけにならないで下さいまし!私でも父の考えをすぐに読めたのです、殿に読めない訳がございませぬ!」
姫の言葉に、信長は如何にも余裕有り気にふっとほくそ笑む。
「父上様は此度、殿を殺める気でおりまする。会見は、尾張を奪う為のただの口実。目的はあなた様のお命なのです!」
「──」
「父上様の事、私の存在など顧みず平気でこの城にも軍勢を差し向けましょう。そうなれば、もう……」
最悪の結末しか思い浮かばない頭を、二、三度強く横に振ると