ぜんぜん悪く思っていない原田の謝罪。おつぎは、永倉が副長のまえに立つ。
そのマジなに、さしもの副長もどうでてくるか考えあぐねているらしい。
「土方さん。みなでまた、剣術の試合をする約束をした」
「あ、ああ。そりゃぁいいな」
「総司や平助も含めてな。ああ、小細胞肺癌 八郎を忘れてた。なぁ、主計?」
「え?それは、願っても・・・。い、いえ、そんなことないですよ」
突然ふられ、つい本音が。いいや、同調しないといけない空気だからしたまでである。
「悪いが、あんたは抜きだ、土方さん。だが、審判役に呼んでやってもいい」
「おいおい、新八・・・。おれは、最強の剣士だぞ」
苦笑する副長。おたがい、自然な動作で握手をし、それから拳を打ち合わせる。
の一人である。
外国奉行で外交官的な役を務め、フランスに留学をしてからは通辞、つまり通訳もしているはず。
背はそんなに高くないが、けっこうなイケメンである。鼻筋の通ったそのは、フランスでパリジェンヌにもてたかもしれない。
この二日前、勝と西郷の会談が、田町にある薩摩屋敷でおこなわれた。
そのことを、おれたちはすでにしっている。その結果も含めて。それは、おれの未来の知識だけではない。双子が、リアルにもたらしたのである。
江戸の町は、助かった。敵にも味方にも、焼き払われずにすんだのである。もっとも、上野などでの戦いはこの後におこる。それでも、全土が焼失するわけではない。松濤は、江戸城明け渡しまでに、幕府関係者がおとなしくしておくよう見張り、説得する役目をおおせつかっている。
気の毒な話ではあるが、かれは今月のうちにこの役目のために死ぬ。
それは兎も角、わざわざここにやってきたは、推測したまんまである。
「江戸城明け渡しが無事にすむまで、そこでじっとしておれ」
つまり、そういいたいのである。
局長は、笑って松濤をあしらう。いや、厳密には勝の要望をうまくかわす。
松濤は去った。が、その翌日には、またちがう男がやってきた。という男である。
松濤より、心持ち背が高く、こっちがひくほど傲慢である。
副長が、「鬼の副長」の眉間に皺をよせるあのスタイルで、あきらか「とっととうせやがれ。馬鹿野郎っ!」というオーラ感満載で、かれはさっさと追い返された。
新撰組を訪れるのは、なにも勝の関係者だけではない。双子のしらせを受け、会津からも数名やってきた。勝のをもって対応する。その分、かれらの滞在時間もながくなる。
金子家の敷地は、三千坪ある。建坪は百四十坪を有している。それでも、仲間がじょじょに集まってくるおかげで手狭になり、金子家だけではまかないきれなくなってしまった。そのため、村内のという人のお宅や、観音寺というお寺へ分宿することになった。
金子健十郎は、名主となる勉強中である。齢二十三歳。当主をついだばかりであるが、しっかりしているいい若者である。ふってわいたような、ぶっちゃけ災厄としかいいようのないこの受け入れも、ひとえに幕府のためと快く受けてくれたのである。
すらりと背の高い、ひと好きのするようなに物腰である。時代劇にでてくるような、「めっちゃいい名主さん」感が半端ない。
ちなみに、現代では東京メトロ千代田線北綾瀬駅から、徒歩で綾瀬川までいったところに「五兵衛新田 金子家 甲陽鎮撫隊滞在地」という遺構がある。それから、足立区立しょうぶ沼公園等、公園がおおいらしい。
隊士の数が増えるにつれ、気の毒になってくる。これでは、ニート組織である。農作業の忙しい時期ではあるが、ほとんどが素人。役に立つどころか、いらぬことをして手間をかけてしまう始末である。ゆえに、力仕事でなにかあれば、率先して手伝うことにする。
食事が、最大の難関であることはいうまでもない。双子は、敵味方の動向を探ったり根まわししたりすると同時に、海や山へ漁や猟にいったり、山菜や野菜をとってきたりし、そのうえでめっちゃおいしい食事をつくってくれる。
そんなうまい食事にありつけるたびに、感謝するとともに情けなくなるのである。