を向けると、いつもはさわやかな笑みを浮かべているかれのには、感極まっているっぽい表情が浮かんでいる。
おおっと、おれの熱弁は、そこまで感動的だったというのか?
おれ自身、自分でいいながら感動に酔いしれているところもあった。ここにスマホがあれば、録音しておいてことあるごとに再生したり、ここにはいない仲間たちにきかせたりしたかったほどである。
悲しいかな。Botox價錢 スマホどころか、いかなる録音機器もない。
残念であるが、それぞれの脳と心にしっかり刻み込んでもらうしかない。
ってにはそんなことを願っておきながら、おれ自身は、一字一句たがえず再現できるほどの記憶力はない。
こればかりは、仕方のないことである。
「主計。おぬし、やはりぽちたまにまで懸想しておるのではないか」
「はあああああ?」
斎藤にさっきの『あなたたちのすべてがほしい』発言を、ツッコまれるとは思いもよらなかった。
まさかの斎藤の奇襲攻撃じゃないか。完璧、想定外であった。
でもまぁ、斎藤はもともと天然である。しかも、KY的な面もある。しかもかれは、JKのようにそういう系の話題が好きみたいだし。
かれの副長にたいする、悪意のない暴言の数々を鑑みても、ツッコんできてもおかしくなかったのかもしれない。
って、そこじゃないし、斎藤を評価している場合でもない。
「すべてがほしい、などと……」
「わああああああああああああっ!」
斎藤に体ごと向き直ると、かれの両肩をがっしりつかみながら叫びまくってしまった。
かれの真実の追及を、なんとしてでもとめたかったからである。
いまの叫び声で、またしてもこのあたりの野生の鳥獣が騒ぎはじめた。
いまの叫び声も、敵軍にも届いたはずだ。
これだけ叫び声をあげまくっているんだ。敵軍はきっと、おれたちのことを『あいつら、ヤバい系の集団だったんだ』って認定したかもしれない。もしくは、おれたちがダンジョンにでも迷い込み、ゴブリンの集団にでも襲われているって勘違いしているかもしれない。
もしかすると、『かかわりあいにならずに見逃してよかったなぁ』って、伊地知と板垣の間で話をしているかも。
そんなありえないことをかんがえているとき、副長が大笑いをしはじめた。しかもイケメンに似合わず、腹を抱えて大口をひらけ、よだれをまき散らしそうな勢いで「ガハガハ」笑っている。
笑いが伝染するのはいつものことである。
島田と蟻通も、涙を流しながら笑いだした。
感動とうれしさの涙は、いまは『お笑い』のほうにかわってしまっている。
「あいかわらずであろう?おれが抱えているのは、隊士たちのや矜持だけではない。それから、まとめたりするだけでもない。言の葉は悪いが、かような馬鹿どもの相手もしなければならない。体躯がどれだけあっても足りないよな。たま、おまえは馬鹿どもをあしらうことにも長けている。そうであろう?」
さっきまで狂ったように笑いまくっていた副長が、不意に笑うのをやめた。
イケメンに、キュンとしてしまうような笑みが浮かんでいる。
そして、寂しさ感満載の声音で説得を再開しはじめた。「たま。どこまでもったいぶるつもりかと辛抱強くまっておりましたが、いいかげん「またおいてくださいニャア」と、素直に副長の脚にすりすりしたらいかがですか?たまが期待しているほど、新撰組の方々はたまのことを「悲劇の男」としてはみておりませぬぞ。それどころか、気にすらしておりませぬ」
なんと、それまで沈黙していた、っていうか、存在感すらなかった俊春が、またなんかいいだした。
しかも、以前とはちがってダイレクトに想いを伝えて、っていうかたたきつけた。
「なんだと?すまぬ、よくきこえなんだ。弱虫で泣き虫で馬鹿でのろまで、おまけにごますり上手なわんこが、いじめられてしくしく泣いておるのではないのかと、つねに案じすぎているものだから、耳朶が遠くなってしまったようだ」
をあわせ、おたがいの
俊冬と俊春は、副長の前後で片膝をついている。そのままの姿勢で、このときになってやっとをみつめあった。
「なんですと?女たらしでついでに男泣かせで、年中発情しまくっていてろくに務めをこなさぬだけでなく、務めはすべてあわれなわんこにおしつけ、雌猫のみならず雄猫まで追いまわしているくせに、いかにも自身は有能な策士でみずから東奔西走していると装い偽り、かような不埒千万なおこないばかりしていて耳朶が遠くなったですと?」
「自身の不手際のくせに、いかにも犠牲になってやったといわんばかしの態度をとるわんことはちがい、にゃんこの耳朶は繊細であるからな。ちょっとした心の変化でも体調に支障をきたすのだ」
「繊細?ふんっ!平気でわんこを踏みつけ蹴り上げ殴り飛ばし、奴婢のごとくあつかう悪党のどこのなにが繊細だと?繊細がきいたら、怒り狂うであろう」
突然、兄弟喧嘩がはじまった。
副長を間にはさみ、両者の火花ってか、炎の柱が揺らめきたち、充電時の雷マークみたいなものがいくつもあらわれている。
「お、おい……」
さすがの副長も、とつじょはじまった諍いにめっちゃひいている。ってか、怖がってあとずさりをしている。
あのまま両者の間にいたら、ぜったいにとばっちりを喰ってしまう。
せっかくのお涙ちょうだいのシーンが、いまではある意味ハラハラドキドキの展開へとかわってしまった。
「立て、この弱虫の泣き虫わんこ。どうやら、恥をかかねばわからぬとみえる」
「傲慢で身勝手で恰好つけしいのにゃんこよ、よろしいのですかな?恥をかいてみっともない思いをするのはどちらか、明白だと思いますが」
両者が同時に立ち上がった。
この二人のガチな兄弟喧嘩が勃発したら、「ドラゴ〇ンボール」の『孫〇空』と『フ〇ーザ』の戦いのごとく、宇宙規模のすさまじいものになりそうである。このあたりどころか、日本が消し飛んでしまう勢いで繰り広げるにちがいない。