「私がおることで三津を縛り付けて良い相手が現れたのに先に進めんってなるのが嫌なんよ。三津の先の幸せを奪うなんてしたくない。 でももし,私を忘れたくないって強く思ってくれるならこれからも毎日私の事を思い出して欲しい。 私も三津を想わない日は一日としてないと誓う。」 三津は何度も首を縦に振った。 「私も九一さんを忘れる日なんて絶対ないです。いつもどこかで想います。必ず。」 三津の真剣な眼差しに入江はふっと笑みを浮かべた。 きっと三津ならそう言うと思っていた。性格の悪さが出たなと自分でも思った。 縛り付けたくないと言いながら,これで自分だけを想うように仕向けた。 「次会う時までそのままの気持ちで私を想ってくれるなら今度こそ一緒になろう。」 すると三津は迷わず頷いた。もう先は約束されたようなもんだ。 三津を腕に抱いて明日が来るのが名残惜しいと思いながら眠りについた。https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/145038163 http://carinacyril786.e-monsite.com/blog/--11.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/6556a01d-1e59-6491-a45d-002816106c6e/SSGvjnBcg4gpAtxAgLwFJRU7C94Yjl6LUPLZv0F7IUF5T3joYssAk7VRWg 翌日,朝餉を食べ終えた後で三津は入江に持たせるおにぎりを作っていた。 伊藤の分もと言ったがあいつのは要らんと一蹴された。 二人で台所で最後の時間を楽しんでいるところに文とすみがやって来た。 「ちゃんと思い出作った?」 「作った作った。」 入江は余計なお世話だと文の問いに適当な返事をした。 「また何もせんかったん?」 文が半ば呆れ気味に入江と三津の顔を交互に見ると二人は無言で顔を見合わせた。 それから三津が耳まで赤く染めて目を伏せた。 「えっ何。何かはしたそ?」 「待って文ちゃん。愚兄の生々しい話は聞きたくない。気持ち悪い。」 興味津々に聞き出そうとする文をすみが止めた。 「そうよな。ごめんごめん。後で三津さんに聞くけぇ。」 文がにやりと視線を寄越すから三津はビクッと肩を揺らして今度は顔ごと逸した。 相変わらず表情が素直だとすみが微笑ましく思っていたがある事を思い出してその顔を歪めた。 「そうや,クソ男が迎えに来とるそ。」 すみが忌々しいと舌打ちをしながら胸の前で腕組みをした。 「女子がクソとか言うなや。どうせ俊輔にも暴言吐いたんやろ。」 「別に?萩の空気が汚れるからさっさと消えろって言っただけっちゃ。」 「はいはい,さっさと連れて帰るわ。三津,もう少し別れを惜しみたかったけどこう言われたら帰るしかないけぇもう行くわな。」 入江がすみに当てつけがましくそう告げると三津は眉を八の字にして物凄く寂しそうな顔で入江を見つめた。 「見ろやすみ!三津のこの寂しそうな顔!こんなんされたら帰れんやろが!」 行かないでとは言わないが,寂しくて堪らない。それを必死に堪らえようとする哀愁を帯びた顔にすみは罪悪感に襲われた。 「じゃあ帰らんとここに残ってさっさと子供作りぃや。」 「それはまだ早いそ。」 「じゃあさっさと伊藤さん連れて帰り。三津さんも今日は仕事行かんにゃいけんのやけぇ。」 文にまでそう言われたら返す言葉もない。今度は入江の方が帰りたくない気持ちを表情に出して三津を見つめ返した。 「ほら。余計名残惜しくなる前に帰れ。」 文とすみは二人が余計に互いに恋い焦がれるようにわざと雰囲気を壊した。 これで三津が入江をより恋しいと思って自分は入江に恋してると思えばいいのだ。 玄関を出ると伊藤が居心地悪そうに待っていた。そりゃそうだ。元嫁が不機嫌な顔でじっと睨んでくるんだから。 「伊藤さんもお気をつけて……。皆さんにもよろしくお伝えください。」 三津がぺこりと頭を下げるのを伊藤は少しにやけた顔で見ていた。 「おいこら女好き。やらしい目で三津さん見んな。」 すみのどすの利いた声にすぐさま表情を引き締めて前を向いた。 「向こうに着いたらまた文を書く。待っちょって。」 「はい,待ってます。」