「ん?何思い出したん?」
「あの人と出逢うのと同時期ぐらいにあった縁談の話を……。新ちゃんを亡くして間もなかったから嫁ぐ気なんてさらさらなくて断った事を……。」
すると入江はあぁと声を上げてくすくす笑った。https://plaza.rakuten.co.jp/carinacyril786/diary/202403290000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/e7d299793250773b51b22fe1e28d4ae7 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/03/29/010623
「そこに嫁いどったならどうなっとったやろな。」
「さぁ……。見当もつきません。」
呉服屋の若旦那だから後継ぎを急かされたのは間違いないなと苦笑した。もしかしたら今頃子を抱えてたかもしれない。
「三津も大して恋しとらんけぇ色恋に関してはほぼ無知やな。」
そこも同類ぞと入江は何故か勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「そうですよ大した経験もしてませんよ。」
三津がやさぐれたように吐き捨てると入江はにやりと口角を上げた。「そしたら私で経験積んだらいいそ。」
こっちの方は三津より経験あるぞと片手で胸を鷲掴みにした。
「なっ!阿呆っ!」
咄嗟に頬を叩いてべちんっと派手な音をさせた。入江は手を退いて笑いながらちょっと痛いと叩かれた頬を擦った。
「小心者やけんこの態度やないと三津に触れられんみたいや。ごめん。」
不愉快にさせてしまうのは承知の上だけど今回ばかりはどうしても抑えきれない。禁欲の実績もここで崩れ去りそうだ。
「すみません……びっくりして思いきり叩きました……。」
しゅんと眉を垂れ下げながらごめんなさいごめんなさいと謝った。大丈夫?と覗き込んで来るから入江はあーもう!と声を上げた。
「その顔いけん。そそる。」
入江はコツンと額を合わせて鼻先を触れ合わせた。
「そんなん三津から誘っとるのと同じや。」
それには違う!と反論しようとした三津の口をすぐさま塞いだ。
溺れるような深い口づけを与えながら三津の体にそっと触れた。
胸の膨らみに優しく触れて敏感なところを探り当てる度に三津の体がビクッと跳ねた。
「ここ好き?」
反応がいい部分をわざと弄んだ。否定も肯定もしないで小さく体を震わせながら羞恥に耐える姿が愛おしくて堪らない。
「やけんその顔がいけん。わざとなん?」
わざとこっちの理性を取っ払おうとしてるとしか思えないと指先で首筋を上から下に撫でた。
「ちょっ!待っ……てっ!」
そのまま袷の隙間から手が滑り込んできて胸が手の体温に包まれた。
入江の体を押し返そうとするけど意地悪な指先に体は正直に波打った。
「九一さんっ……!」
「ごめんね。今回は止めるつもりない。」
入江がとろんと上気した顔を見せた。それからまた啄むような軽い口づけを何度か落として胸に顔を埋めた。なだらかな側面を鼻先でくすぐって寝間着の上から口に含んだ。
三津は荒くなる呼吸を手の甲で必死に抑えた。
強引でも荒々しくもなくて,甘えるようにしつつも快楽を与えてくる。比べるのもなんだが桂とは全くの別物で,他を知らない三津の頭は混乱していた。
「九一さっ……。」
「ん?直がいい?」
そう言って袷を開いた入江は素肌を食んだ。びりびりするような刺激に三津は堪えられなくなった。
「違っ!う……のっ!体が変……。もっ!やめてっ……!」
舌で少し遊んでから入江は三津から身を剥がした。
「やめていいそ?物足りんくない?」
にやにやとする顔で見つめられて三津は腹いせに鼻をぎゅっと摘んでやった。「意地悪してごめんね。もう何もせんけぇゆっくり寝り。」
入江は三津を抱きしめておやすみと背中をとんとん叩いた。
「九一さんはそれどうするの……。」
存在感あり過ぎる塊がさっきから体に当たってるんだがと目を伏せた。
「私は三津が寝た後で思い出しながら一人で出来るけぇ大丈夫。今回は手ぇ汚させんけぇ大丈夫。」
「すみません余計な事聞きましたおやすみなさい。」
くすくす笑う入江の腕の中で三津はぎゅっと目を瞑った。
『中途半端やけど手ぇ出されたのにこの状態で寝れるんやな……。』
どういう精神状態なのか気になる。また襲われると言う不安はないのだろうか。
それに関しては一応受け容れる心の準備があったんだなと思うことにして規則正しく三津の背中をとんとんし続けた。