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「案ずるな。少なくともそれは

「案ずるな。少なくともそれは、天が何とかしてくれよう」 

 

鉛を張ったような、暗く重々しい空を仰ぎ見ながら、揚々と呟いた。 

 

何かを期待するような笑顔を浮かべる主君を見て、重臣たちは思わず首を横に捻(ひね)る。 

 

にございますか?」 

 

「ああ。じゃと言うても、あくまで運が良ければの話じゃがな」 

 

そう言って、また一つ笑みを漏らすと 

 

───皆々!よう聞くのじゃ!!」 

 

やおら信長は生真面目な表情になり、将兵たちの前に出()でて大声を張った。 

 

「少数の兵じゃからというて大軍の敵を恐れるな!勝敗の運は天にある! 敵がかかって来たら引け、敵が退いたら攻めかかれ! 

 

敵を捻り倒し、追い崩すことなど容易いことじゃ!良いか、敵の武器をぶん取るでないぞ、捨てておくのじゃ! 

 

この合戦に勝てば、戦に参加した者の家は名誉。末代まで高名である。 皆々、ひたすら励むのじゃ!!」 

 

信長の激が飛ぶと、居並ぶ兵たちの間から「「おおぉー!!」」と歓声の如き叫声がわき上がり、 

 

今川の大軍を前に内心不安を抱えていた兵たちの、やる気と団結の思いとを一気に高めた。 

 

そこへ https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202408030002/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/6b3facc27ea954ba1a9ff07e74e16b93 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/08/03/204914?_gl=1*by4s1s*_gcl_au*MTY2OTkwNTc4OC4xNzE4OTcyMTIz

 

「畏れながら申し上げます! 前田利家殿、毛利長秀殿、木下嘉俊殿、森小介殿、安食弥太郎殿ら、敵勢の御首を手に、只今お戻りにございます!」 

 

討死となった佐々政次、千秋季忠の軍に加わって無事だった者たちが、各々討ち取った敵の首を手に戻って来たのである。 

 

信長は合流した彼らに対しても 

 

「良いか、少数の兵じゃからというて大軍の敵を恐れてはならぬ。勝敗の運は天にあるのじゃ─── 

 

と、先程兵たちに向かって言ったことを、同じく言い聞かせたという。 

それから程なく、信長は合流した者たちを含む数多の兵たちを引き連れて、中嶋砦を出発。 

 

今川本隊が陣を張っているとされる、桶狭間の山際まで軍を進めた。 

 

まさにその時である。 

 

天空を厚く覆(おお)う、鉛色の雲の間から、ぽつり、ぽつりと雨が降って来た。 

 

これに、思わず空を見上げ、カッと双眼を見開いた信長は 

 

『 やはり───天はこの儂の味方であったか! 』 

 

と、心の中で声を大にして叫ぶと、やおらその面差しに感動に満た微笑を広げた。 

 

「恒興よ!」 

 

「はい、殿」 

 

「これでそちの首を斬り落とさずに済みそうじゃ!」 

 

「それを聞き、大いに安堵致しました。殿の首も、大御ち殿に斬られずに済みそうでございますな」 

 

「はははっ、まったくよ」 

 

信長が軽快な笑い声を響かせている最中にも、雨はどんどん激しさを増してゆき、 

 

まるで目の前を白い薄衣で覆ったかのような、前方が殆んど見えぬ程の豪雨となった。 

 

あまりの激しさに、沓掛峠にあった二抱えか三抱えもある大きな楠(くすのき)が倒れたと言い、 

 

これを幸運に思った織田軍は「この合戦は、熱田大明神の神慮による戦いではなかろうか!」と言って、歓喜したという。 

 

信長は馬の手綱を操り、背後の将兵たちの方へ振り返ると 

 

「さあ!皆々参ろうぞッ! 守りの厚き義元の陣に近付けるのは今しかない! 

 

そなたらの懸念であった進軍の足音も、馬の嘶きも、そして我らの姿や気配も、この恵みの雨が全て消し去ってくれよう! 

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