に向かう。 「やかましいっ!いいところなんだ。てめぇは、だまって小便でももらしてろ」 おおっと。副長が、大石の黒歴史を暴露する。 途端に、真っ赤になって口を閉じる大石。 「なにゆえ、毒を盛らぬ?最後の忍び、らしいな。毒への素養ももちあわせておろう?」 俊冬も、同様の疑問をていしている。 「毒は、つかうなといわれている。ただ、それだけだ」 https://blog.naver.com/nav3656/222897391814 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2022/10/12/234709?_ga=2.154830718.736718141.1665585913-86498919.1665585913 https://www.evernote.com/shard/s330/sh/c712d44a-5c98-feb8-ba54-c0ddb7882459/ed52eaa1b6070c92b43f85d586224928 ややあって、沢村が応じた。 ハスキーボイスというよりかは、声が潰れてしまっている。先日の老人の声とは、まったくちがう。 声を自在に操る・・・。さすがである。 「気の毒に・・・」 俊冬のつぶやき。沢村にはきこえぬほど、ちいさなものである。 確実な はつかうな。つまり、成功させるつもりはない。未遂でいいというわけか。 敵は、ことがおこせればいい。江戸を焼き払い、幕府に終止符をうつことができれば・・・。 恭順を示している将軍と、そのおおくの家臣や関係者を、正々堂々と始末できれば・・・。 「残念だが、あんたは接触した者の正体すらみきわめられず、情報収集、手配り、すべてにおいてまずい。経験不足、であろうな」 沢村はそのときになってはじめて、白い寝間着姿の男が、自分が依頼した助っ人の一人だということに気がついたらしい。 一瞬、その厭世的な が、驚きに染まる。 「時代は、忍びや を必要とせぬようだ」 俊冬のつぶやき・・・。 その一言が、するどい冷気と静かな夜気に、鋭刃のごとく突き刺さる。 「沢村さん、最後の忍びといわれるあんたに敬意を表し、新撰組の最強の忍びが相対させていただく。万が一にも生き残れたら、伊賀に戻って平穏な余生をすごすがよかろう」 「篝火を消せ。急げっ」 打合せ通り、組長たちがすべての篝火を消させる。 この夜は、曇天である。真っ暗闇とまではゆかずとも、月明かりも星々の煌めきもない。 人や樹々のシルエットが、かろうじて認められる。 「相棒、 !」 号令以下、相棒の威嚇の唸り声が地を這う。 そのとき、まだ闇に が慣れぬまま、襲撃者の一人が逃げだそうとしたらしい。 相棒が怒声を発し、それを阻止したはず。 逃走に失敗した男の無様な悲鳴が、響き渡る。 「てめぇらは、おとなしくしてろ。忍びが助かったら、てめぇらも無事、こっからだしてやる」 副長の怒鳴り声。 からそのつもりであるが、これで襲撃者たちはいらぬ気をおこさず、しばらくじっとしているはず。 ムダに動かれると、対処せねばならない。 殺傷ってことになりかねない。 ゆえに、じっとしておいてもらうにこしたことはない。 夜目のきく相棒の は、確実にかれらを見張り、動きを封じる。「あんた、すでに五度死んでいるぞ。はやく、闇に を慣らしたほうがよい。獣がうしろの樹の上より、おぬしの一挙手一投足をみつめているからな」 沢村のシルエットが、うしろを向く。 おれたちより、沢村のほうが夜目がきくであろう。 さきほど、次の間で手拭いをしたのは、俊冬に教えてもらったからである。 沢村は、おれたちが気配を察して襖をひらけると、かならずや明かりをどうにかする。そうなると、暗くなる。は、明るいところから急に暗くなるとみえなくなる。が慣れるまでに、時間がかかる。 一説によると、海賊のキャプテンは片方の に眼帯をつけているが、夜間での戦いでも柔軟に動けるため、であるとか。まぁそれは、海賊だけでなく、将軍や武将のなかには、そういうシチュエーションに備え、眼帯をしていたりするらしい。 さきほど、俊春が目隠しされて冷水を浴びせられていたのも、その理由からである。 つまり、自分で目隠しをし、みなに浴びせられていた、というわけだ。