「なぁ、俊春。おまえは、髪を伸ばさぬのか?兄貴のように、伸ばしたほうがよくないか?」 おれがおれ自身の「死」と向きあっているのに、永倉は俊春の髪形について言及する。 『そんなもの、どーでもいいじゃないか、永倉先生』っていいたくなる。 道案内のため、双子が先頭にいる。肺癌末期症狀 ゆえに、永倉はその小柄な背に、どーでもいい問いを投げかけたのである。 耳の不自由な俊春に、それがわかるわけもない。 ややあって、肩を並べる俊冬が、弟の肩を拳でこづいて注意をうながす。 歩をとめ、振り向く俊春。永倉は、再度おなじ問いを繰り返す。 が困惑にかたどられるのが、早暁の薄暗さのなかでもみてとれる。 おれたちもまた歩をとめ、俊春がどう答えるかまつ。の害より免れよう、と」 俊春は、至極生真面目に答える。 「おいおい、俊春・・・。いや、俊冬、いくらなんでも・・・」 斎藤がいいかけ、口をつぐむ。 「おれも俊冬殿に頭を刈ってもらってるんですけど、このスポーツ刈り、もとい、この髪形は、そういう理由からだったんですね」 双子は、異世界転生で床屋もやっていたにちがいない。俊春は俊冬を、俊冬は俊春をたがいにカットしあっているし、おれは俊冬に刈ってもらっている。例の490円の美容院のバリカンより、よほどかっこいいスポーツ刈りに仕上げてくれる。ゆえに、すこし伸びてきたら、さささっと刈ってもらうのである。そうすると、俊春も対抗意識を燃やしてか、おんなじタイミングで、刈ってもらうのである。 このスポーツ刈りが、もててしょーがないのをもてなくするための防御アイテムだったとは・・・。 「主計。おまえ、誠におめでたいやつだな」 「ああ。新八の申す通り。長生きするわ、おまえ」 なにかわからないが、永倉と原田にほめられた。斎藤にいたっては、ビミョーな笑みを浮かべてこちらをみている。があうと、肩をすくめる。 おれも、すくめかえす。 俊春の「先生方、もう間もなく山の頂でさございます。それをくだれば、八王子。あとは、馬で駆けれましょう」 「高尾山なのか?」 俊冬の説明に、永倉が尋ねる。 古くは修験者の霊場である。現代でも、東京から小一時間でこれる場所として、おおくの登山客や観光客が訪れている。ここからの富士山の眺めは素晴らしいらしい。 たしか、ケーブルカーなどもあったかと。もちろん、いまは鬱蒼としているが。 永倉は、ちょっぴり不機嫌そうな感じだが、それ以上はこの話題にふれなかった。 結局、おれの将来については、うやむやになってしまった。 まぁ、そんな将来のことより、、それから直近まで迫っていることの方が大事であることはいうまでもない。 正直、ふれられたくないということもある。 だけで、ていっぱいである。そして、いまからほんのさきのことで、頭がいっぱいだから。 しばらくあゆむうちに、自分の未来のことなどすっかり抜け落ちた。一つには、睡魔がやってきていることがある。いままで気がはっていたからか。いまさらになって、疲れがどっと襲ってくる。 おれだけでなく、みな、無言で歩をすすめている。 不意に、原田と斎藤があゆむ速度をあげ、双子に追いつきなにやら話しかけだした。 ははん。眠気ざましってわけか。 こういうときは、コーヒーだよな・・・。なーんて、考える。 いつの間にか、永倉が肩を並べている。 「おまえ、あいつらにさきほどのことを話したか?」 「さっきのこと?ああ、おれのさきの話ですか?」 おれ自身のことを話した覚えはない。が、双子のことである。こちらの心中をよんだ可能性はある。 それを、そのまま伝える。 相棒が、みあげていることに気がついた。かわたれ時である。そこまではっきりとみえるわけがないのに、そのの奥に宿る光までみてとれる。 例の違和感である。 「そうか・・・」 「え?なんなんです、永倉先生?さっきから、おかしくないですか?なにをおっしゃりたいんです?」 なにかふくみがあるような態度。思わず、小声で詰問してしまう。 永倉はあゆむ速度をゆるめつつ、をまえの四人へと向ける。 原田と俊冬が冗談をいいあっているのか、笑いあっている。そして、斎藤は口の形をおおきくし、俊春になにやら話しかけている。 双子の気をひき、その間に永倉がおれと話をする。 組長三人が連携しているのだと、そのときになってはじめて気がついた。 「おまえ、あいつらはいないつってたよな?史実に残ってないって意味だ」 「ええ。それらしき人物は、おれのしるかぎりでは・・・。おれも、この時代のすべてをしっているわけではありません。もしかすると、おれがしらないだけかも」 「おいおい、主計・・・」 永倉は、わずかに