を擦り上げつつ軌道をかえ、そのまま切っ先を跳ね上げた。同時にちいさく踏み込むと、切っ先で海江田の眉間を突いてゆく。 剣道でいうところの、擦り上げ面の変化形である。 海江田はそれを頭部をわずかにそらし、紙一重状態でかわした。 それからがすさまじいことになった。 生髮維他命 攻撃につぐ攻撃の薬丸自顕流にたいし、永倉は終始受けては返している。 「主計、しっかりみているか?永倉先生は、わざと攻撃を受けていらっしゃる。おぬしのためにな」 いつの間にか、俊春が身を寄せていた。ささやかれ、ハッとする。 どうしよう・・・・・・。海江田の猛攻を見切るどころか、正直よくみえない。 焦りが脳内を満たし、よけいにみえなくなってしまう。 「落ち着け。いまのおぬしなら、見切れる。もともとおぬしの腕は悪くないし、鍛錬で上達している。もっと自信をもて。かりに実力がなくとも、気のもち方一つだ。せっかく腕があるのに、おぬしは自身を信じぬから、から勝負がきまってしまうのだ。かようなことは、じつにもったいない」 「ぽちの申すとおりだ。おれをみやがれ。おれなど、腕もあるが、それ以上に気力で勝っているぞ。ゆえに、おれは最強なんだ」 俊春のささやきに、すくなからず驚いた。そんなふうに思ってくれているのかと思うと、単純なおれはうれしくなるし、全身に力がみなぎってくる気がする。 つづいて、副長がなんかいったかもしれないが、俊春の言葉で頭がいっぱいになっていて、なに一つ入らなかった。 「おぬしは、永倉先生やわたし同様鍛錬をおこたらぬ。ゆえに、かんがえずとも本能のまま動ける。これは、剣士にとってなによりの強みだ。自信をもち、落ち着いてゆけば、充分勝てる相手だ」 「まっ、おれほどではないにしろ、一撃くらい喰らわせられるんじゃねぇのか?」 俊冬同様、俊春の口調も耳に心地いい。海江田にきこえぬようささやかれるそれは、まるで麻薬のように心を満たし、気持ちよくさせ、昂らせてくれる。 そのあとに、副長がなんかいった気がするが、それも耳に入ってこなかった。 「ぽち・・・・・・」 「案ずるな。おぬしの腕は、海江田先生より上だ」 俊春は、おれとをしっかりあわせてから一つうなずき、そう断言してくれた。 おれは、めっちゃ単純である。単純すぎて、ときどき自分でもびっくりすることがある。 風邪とか歯痛とかの不調で医者に診てもらい、医者から「これはたいしたことはない」といわれれば、即座に痛みがなくなったり元気になったりする。逆の発想で、がん細胞があるといわれれば、がん細胞などないにもかかわらずそこに悪性の腫瘍をつくってしまう、そんな勢いで単純なのである。 つまり、俊春にいわれてすっかりその気になってしまっている。ってか、勝てる気しかしなくなっている。 そして、もう一度永倉と海江田の試合を観察してみた。 なんと、みえる。さっきまでみえていなかった永倉と海江田の斬撃や脚さばきが、いまでははっきりとみえる。 たしかに、俊春のいうとおりである。 永倉は、海江田のやつぎばやの斬撃をわざと受け流している。しかも、海江田に気づかれぬよう、必死に防いでいる感をだしまくっている。 海江田には悪いが、永倉の方が経験も実力もはるかに上をいっている。 そうだった。いまは永倉はいいんだ。海江田の動きをみなければ。 しばらくしてから、永倉はみずから降参した。 「いやー、最初のはまぐれあたりでした。さすがは海江田先生。到底かないませんな」 永倉は、ぼろぼろの木刀で肩をぱんぱん叩きながらヨイショしている。 が、海江田はそのヨイショをスルーした。 気がついているのか。それとも、内心ではめっちゃよろこんでいるのか。 かれのポーカーフェイスからは、よむことができない。 「よし。つぎはおまえだ。思いっきり胸を借りてこい」 永倉が海江田に背を向けこちらに戻ってきながら、にんまりと笑みを浮かべた。 「はい。がんばります」 せっかくの永倉の好意である。ぜったいにムダにしたくはない。 決意をあらたにする。 「わたしのことは気にするな。胸を借りることができぬからと申して、おぬしを責めたりはせぬ。それよりも、おぬしが愉しんでくれることを切に願う。先夜のわたしの、否、おぬしの父上の剣を思いだすといい。わたしは「之定」を通じ、おぬしとおぬしの父上を感じることができる。おぬしがすでに父上を超えているといえば嘘になるが、とおくおよばぬというわけでもない。確実にちかづいている」 「ぽち・・・・・・・」 俊春の指が五本ある方の掌が、おれの頭をやさしくなでる。 「おぬしの父上が、おぬしにしたかったことの一つだ。わたしなどがかわりにというのは不遜すぎるが、感じているのに伝えぬのはおぬしら親子にたいして申し訳が立たぬ」 かれの掌がおれの頭からはなれた。かれはおれと