なにもおちゃらけたり、かれを馬鹿にしているわけでもはない。ただ、名誉なことだと感動しているのである。 それは兎も角、いまの半次郎ちゃんのアドバイスはもっともである。 自分に自信がなければ、信じることができなければ、できるはずのこともできぬであろう。 さっきの海江田との一戦が、まさしくそれである。 永倉と俊春が、『おれならできる、自分を信じて剣を振るえ』髮線後移原因 といってくれた。 単純なおれは、それをただひたすら信じた。できると思えたのだ。兎にも角にも信じたのである。 ゆえに、勝てた。 「桐野先生・・・・・・」 「半次郎ちゃん、オケまるど。さすがは半次郎ちゃんじゃ。半次郎ちゃんは、士道をよう心得ちょっ。半次郎ちゃんな、一族ん誇りじゃ」 おれが感動と感謝を伝えようとした瞬間、別府の半次郎ちゃん攻撃がはじまった。 せっかくの感動も、別府のせいで半減してしまった。 ってか、オケまる? 野村のやつ、どんどん別府をイタイやつにしてるじゃないか。 「半次郎ちゃんとよぶんじゃなかといっちょっじゃろう」 半次郎ちゃんはすぐにやり返した。が、そのが赤くなっているのは、燭台の灯火のせいなのか酒のせいなのか、別府にたいして激おこぷんぷん丸状態だからか、それともほかの理由があるのか、判断がむずかしい。 たとえば、おれへのアドバイスにたいして照れているとか。 「永倉どんやぽちもそうじゃなかやろうか?」 半次郎ちゃんの朱にそまったが、こちらに向けられた。 そのかれとをあわせてから、を永倉へ、それから廊下にひかえている俊春へと向ける。 「半次郎ちゃんの申すとおりだ。もっとも、おれ自身はそうありたいがまだまだ精進できておらぬがな」 永倉はそういってから豪快に笑い、徳利をあおる。 いやいや永倉よ。それは、謙遜がすぎるだろう。 「わたしも同様でございます。ですが、桐野先生のおっしゃるとおり。主計、おぬしは謙遜がすぎる。もっと自信をもったほうがよい」 俊春は、おれとを合わせてから微笑む。 「たま、もとい「眠り龍」は、それはもう自信に満ち溢れていた。満ち溢れすぎていて、正直、うざかった」 つづけられた俊春の言葉に、永倉は酒を、西郷は茶を、それぞれふいた。 しかも、『うざい』なんてつかってるし。 「いまは亡き?「眠り龍」はけしんだとな?」 西郷の問いは発せられてしかるべし、であろう。「おいおい、ぽち・・・・・・。かようなことを申してもよいのか?」 永倉もまた、尋ねて当然である。 「ええ。よいのです、永倉先生。たまは、いまここにおりませぬ。距離がはなれておりますゆえ、感じられることもございませぬ」 俊春はしれっと答え、さわやかな笑みを浮かべる。 「「おまえ、なに様だ?双子なのだから、いっしょのだろうが」といいたくなるのを、心の奥の奥、そのまた奥に封印して幾年月」 さらにさわやかすぎるほどの笑みが、かっこかわいいにひろがり、彩っている。 かれは、よほどいろんなものが溜まっているらしい。 「あれほど自信満々の男など、そうそうおりますまい。あの男に必要なのは、主計のごとき謙虚さでございます。まったくもって、主計の爪の垢でも煎じて呑ませたいほどでございます」 重苦しい空気がのしかかってくる。 が、なかで一人、海江田だけはきょとんとしている。事情をしらないからであろう。 「だいたい、兄貴面しすぎなのです。いつもわたしをつかいまくり、自身は顎で指図するだけでございます。兄貴という立場を利用し、わたしをいたぶりおとしめ蔑みまくって・・・・・・。それに、わたしは「狂い犬」などという人格的にどうよ?といいたくなるような不名誉きわまりない二つ名なのに、あの男は「眠り龍」などと、神秘的でじわじわくる二つ名でございます。理不尽にもほどがあります」 兄貴にたいする不平不満は、まだまだあるらしい。それを、だれもがただだまってきいている。 いや、正直いうとききたくない。これは、ぜったいにヤバい系の悪口雑言だ。かかわりあいになってはけっしていけない、パンドラの箱的事案だ。 「おっと、申し訳ございませぬ。日頃の鬱憤のほんのひとかけらが漏れでてしまいました」 ちっとも申し訳なくなさそうに、かれはテヘペロする。 どうやら、いまのはほんのひとかけららしい。 「兎に角、あの男ほど尊大で高飛車で横柄な男はそうそうおりますまい。さしものわたしも、あの男以外出会ったことがありま・・・・・・」 兄貴の悪口になると、俊春の語彙は永遠の泉のごとくわいてくるようだ。が、中途で止まった。かれをみると、その