「副長が一人馬上にいらっしゃれば、目立って仕方がなかろう?」
「それはそうですよね。副長は、目立ちたがり屋です。ムダに目立ちまくっています。まぁご本人は、目立ちまくるのを堪能しているんでしょうけど」
「主計っ!この野郎っ」
「す、顯赫植髮 すすすすみません。つい、心の声がもれてしまいました」
「なんだとっ!」
「まぁまぁ、副長。主計も悪気があって申しているのです」
「いや、島田先生。いまのいいまわし、まちがっていますよね?」
「悪気があって申しただと?ますます気にいらぬ」
「ぽち、それで?おれが的っていうのは、どういう意味なんですか」
副長が拳を振り上げてきたので、あわてて俊春にさきをうながした。
「どこかからか、鉄砲で狙われるやもしれぬ。おぬしが副長とともに馬上にいれば、副長とおなじ目線にいることになる。もしかすると、何者かが狙ってくるのに気づくやもしれぬ。そのときには、副長の盾となって撃たれるのだ。もしもおぬしかま間抜けで気がつくことができぬ場合でも、狙撃手は間違っておぬしを撃つやもしれぬ。その場合、運が良ければを助けた英雄として果てることができる。これぞ一挙両得、一石二鳥、一箭双雕というわけだ」
そんなにひろくもない七日町のメインストリートに、がひしめきあっていて、めっちゃ邪魔になっている。
持論をぶった俊春のかっこかわいいには、これでもかというほどのやさしい笑みが浮かんでいる。
なんだいまのは?ネタか?ジョークか?
いまの話の内容とは、まったくあっていないではないか。
たしかに副長が一人馬上にいれば、指揮官だということがバレバレである。おれたちが新撰組で、馬上にいるのが土方歳三だとしっていたとしてもしらぬとしても、敵の斥候兵か間者がたまたまどこかからみていて、手土産に指揮官の頸でもとってやろうということになれば、馬上の副長を狙撃すればいいだけのことである。
もしも騎馬が二頭いれば、狙撃手はどちらが指揮官か、あるいは土方歳三か判断がつかずに迷うところであろう。
もっとも、馬上にいる者全員を殺っちゃえってことになれば、馬上にいるのが一人だろうが十人だろうが関係はなくなってしまう。
ってか土方歳三を狙うとすれば、おれはどこからどうみても土方歳三にはみえない。
おれが副長とはちがうタイプのイケメンであるがゆえに、バレバレなのではなかろうか。
って、いまのって自分でいって自分でツッコむ気にもなれないほど、くだらぬジョークだった。
なんかむなしくなっただけである。
それは兎も角、いまの俊春の理論っていうか、理屈はわからぬわけではない。
まったくわからぬのは、なにゆえおれなのか?ってことである。
馬に乗れる者は、ほかにもたくさんいる。なのに、なにゆえおれなわけなのか?
「主計、とりあえずよかったではないか。将軍の影武者とか帝の影武者とか、誠に栄誉なことだ」
「すっごーい、主計さん。大丈夫、案じてくれなくっていいよ。兼定のことは、わたしたちが大切にするから」
「そうだよね。兼定も、そうなったらよろこぶだろうし」
「そうかそうか。主計、みじかい付き合いだったが、愉しかった」
「勘吾さんの申すとおりだ。主計、案ずるな。気が向いたら仇は討ってやる」
「はああああああ?なんでそこ、おれが死ぬこと前提なんですか?島田先生。将軍や帝の影武者って、だれかさんは将軍じゃありませんし、帝にいたっては弓をひいている立場じゃないですか」
島田につづいての市村に田村、蟻通に中島の言葉……。
みんな、ひどすぎる。
「ちっ!影武者なら、せめて主計のをどうにかせねばな。五里(約二十キロ)はなれていたってみきわめられてしまうぞ」
なんと、副長までわけのわからぬ戯言をのたまいはじめた。
「わかりました。わ・か・り・ま・し・た。この主計、はどうにもできませんが、もしも大砲や鉄砲の玉が飛んできたら、よろこんで副長の盾になりますよ」
戦時下のために人通りこそすくないが、家屋の窓からこちらをうかがっている人々がいる。しかも、めっちゃイタイ集団をみるような、そんなを感じる。
ここはおれが大人になり、ツッコミどころ満載のこの会話をかわさねばならぬ。
ってか、ツッコミたいがすでにおれのツッコミ力のキャパをこえてしまっている。ゆえに、おれの手に負えるわけがない。
結局、みなからさんざん笑われたり激励の言葉を送られてしまった。
その騒ぎの後、副長はあらためて市村と田村に「いい子にするよう」申し伝えた。
ではありません。新撰組の隊士として、立派にふるまいます」
「そうです。はずかしくないようふるまいます」
二人は、姿勢をただして宣言した。
おお……。すごいじゃないか、二人とも。
俊春は、いったい二人になんといったのであろう。
「よくぞ申した。それでこそ
「副長、わたしたちはもう