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「良かろう。」

「良かろう。」

 

 

それでおっちゃんでは無いと認めてもらえるなら。

斎藤は宗太郎の手を取った。

 

 

宗太郎はにんまりと笑って斎藤を見上げて,二人の手をぐいぐい引っ張り歩き出した。

 

 

「お寺に行くん?」 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202312220000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/40bd51b5814e90ffe905fdd32434a28d https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/22/162005

 

 

連れてったるって言う事はいつものあの場所だろうか?

久しぶりの再会だからきっと時間が許す限り遊びたいんだろうな。

 

 

三津は嬉しそうに歩く宗太郎に行き先を尋ねた。

 

 

「ちゃうで。帰り道案内してるねん。今日は用事があったから出て来たんやろ?」

 

 

と,宗太郎は首を横に振って答えた。

びっくりした。子供ながらに事情を気にしてくれているらしい。

 

 

体だけじゃなく中身も成長したんだと三津の胸の奥がじんわり熱くなる。

 

 

「宗。そこまで考えてくれてたんやね。」

 

 

口の利き方は学習してないが偉い偉いと目を細めて見つめれば,

 

 

「だって総司やなくて斎藤と一緒やねんもん。

遊びに来たんじゃないのは分かる。」

 

 

遊んでもらうのは総司じゃなきゃと口を尖らせた。

 

 

『呼び捨てか。』

 

 

斎藤の心はズタズタだ。

おっちゃんから脱却したのに呼び捨てとは。

そして総司じゃないと遊んでもつまらないと言われたようなもの。

 

 

「あんたって子は。」

 

 

失礼にも程がある。子供だからって許される事と許されない事がある。

三津は恥ずかしくて顔を赤らめながら斎藤にひたすら謝った。

 

 

構わん。気にするな。」

 

 

たかが子供の言う事だとすましてみたものの,

 

 

『沖田じゃなくて悪かったな。』

 

 

気にするなと言いつつ内心は気にしていた。

 

 

自分だって遊び相手ぐらいならなれるぞと密かに総司に闘志を燃やしていた。

 

 

偉そうな口振りの癖に手を繋いで欲しい。構ってほしい甘えん坊。

それが宗太郎であって,そこは相も変わらず。

 

 

「宗太郎はいつまで甘えん坊なん?」

 

 

三津は溜め息混じりに呟いた。するとその口調を真似て宗太郎も呟く。

 

 

「いつまで子供扱いするん?」

 

 

三津はそうねぇ,と少し考えてから好奇心旺盛な目で見上げてくる宗太郎を見つめた。

 

 

「宗太郎が一人前になるまで。

男らしくなったら子供扱い止めたる。」

 

 

いつになるやろねって笑うと,そんなのすぐだと胸を張る。

でも甘えん坊はすぐには直る訳もなく,

 

 

「それまでは手繋いでくれるんやろ?」

 

 

握った手にぎゅっと力を込めた。今はこうして甘えに来てくれるけど,いつかはこの小さな手も離れていくのだろう。

 

 

そしてその手は大好きな人を守る手になるんだ。

 

 

『それまでは繋いどってあげる。』

 

 

三津もぎゅっと握り返して微笑んだ。

 

 

『こいつはいつも誰にでも分け隔ての無い笑みをするが,こんな顔は屯所では見せまい。』

 

 

三津の宗太郎にだけ見せる新たな一面に目を奪われてる時だった。

 

 

「ありゃ,斎藤先生やありませんか?」

 

 

背後から声を掛けられて三人で振り返った。

 

 

「あぁやっぱり!

こんな可愛らしい奥さんと子供さんまでいはったとは!」

 

 

ニコニコしながら男が三人の周りをぐるりと一周した。

 

 

「あんたか。俺の女と子供に見えるか?」

 

 

「後ろ姿は仲睦まじい親子にしか見えませんで!」

 

 

表情を変えない斎藤と違って男は愛想良くニッと歯を見せて笑った。

ごくごくどこにでもいる商人のような男。

 

 

「私は三津と申します。新選組で女中をしてます。」

 

 

こっちは宗太郎で遊び友達だと紹介した。

斎藤が否定をしないから誤解は解いておかなくては。

 

 

「お女中さんでしたか。そりゃえらい失礼しました。」

 

 

男はぺろっと舌を出しておどける気さくっぷり。

この表情の豊かさで,新選組の人間と知りながら話しかけてくれるのだ。

間違いなくいい人だと三津は思う。

 

 

「こいつは副長付きの女中だ。もしこいつに何かしたら副長の逆鱗に触れるから心得とく事だな。」

 

 

三津が余りにも油断しきった顔をするから思わず口を挟んだ。

 

 

「おお恐っ!それだけは勘弁ですわ。ほんならまた近々お会いしましょ!」

 

 

 

斎藤の忠告に男は大袈裟に体を震わせてから,大きく手を振って町中へ紛れて行った。

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