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どうも顎をぶつけたらしい

どうも顎をぶつけたらしい。もぞもぞと起き上がった三津は情けない顔で顎をさすりだした。 『緊張感ねぇな……。』 土方は荒っぽく頭を掻きながら大きな溜め息を吐いて立ち上がった。 三津は自分を置いて部屋を出て行く土方の背中に首を傾げる。 どこに行ったんだろ?と考えてたらすぐに戻って来た。 戻って来るなり三津は頭を鷲掴みにされ顎に冷たい手拭いを押しつけられた。 「ひゃあ!冷たい!」 びっくりして身を捩ると頭を強く押さえつけられた。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202310260000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/93b27152bd0c19be2b72e6c12fd18fca https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/10/27/160934?_gl=1*fnpzpz*_gcl_au*NDk5MTMyMTEwLjE2OTI0NTg3NDE.   三津はぎゅっと目を瞑って固まっていた。 『あぁ……手拭い濡らしに行ってたんや。』 土方の優しさに三津は目を閉じたまま顔を綻ばした。 緊張感も無ければ警戒心も無し。 『男の前で目なんか閉じんじゃねぇよ。俺以外の前で見せんじゃねぇぞ。』 土方の中に小さな独占欲が顔を出した瞬間だった。説教のはずが何をやっているんだか。 『俺にこんな事させやがって。』 心の中ではそう思いつつも,手拭いを当てる力加減はちゃんと分かってる。 三津はさっきまで怒られてた人間とは思えないぐらい柔和な表情。 『これは俺の前だから安心しきってんのか?』 まじまじと油断しきった顔を間近で見ていると急に目があった。 土方の心臓がどくんと脈打つ。曇りのない黒い瞳に自分が見える。 「土方さんてやっぱり優しいですよね。口は悪いけど。」 三津は目を細めてふふっと笑った。 「うるせぇ! 勘違いすんなよ?これは俺が殴ったと思われたら困るからだ。と言うか自分で当てとけ!俺は忙しいんだ。」 あからさまな照れ隠し。濡れた手拭いを三津の胸元に投げつけて文机に向かってどっかり座り直した。 後ろから見て耳まで赤いのが分かると三津はにんまりとした。 「私を躾るのに忙しいんでしょ?何で背中向けるんですか?」 土方の両肩に手を置いて,背中に覆い被さるようにして耳元で声を掛けた。 赤く染まる頬を覗き見て余計に口角が上がる。 背中で感じる三津の温もりと柔らかさに,土方の心臓は物凄い早さで脈を打つ。 「人をおちょくるのもいい加減にしやがれ!」 恥ずかしさと動揺を三津もろとも振り払った。 三津ごときに心を乱されるなんて不覚。 後ろで三津がニタニタしてるのが分かるから腹が立つ。 けれど,三津が斎藤に嬉しそうに,のこのこついて行った時ほどの不快感はない。 こう言っちゃあ何だが心地良い苛立ちだ。 今日の少しの間居なかっただけで随分と静かだった。 仕事はまずまずはかどった。苛々する事も少なかった。 なのに,心に落ち着きはなかった…気がする…。 少しでも時間があると三津を探していた。 たえのお茶より三津のお茶がいいと思った。 『それは間違いなく疲れのせいだ。俺は疲れてんだ。』 土方は頭をぐしゃぐしゃとかきむしった後目頭を押さえて俯いた。 「土方さん疲れてるの私のせい?」 三津はしょぼくれた目で土方の顔色を窺う。 「お前如きにいちいち疲れを感じてたら身が持たねえよ。」 三津のクセに心配してんじゃねぇ。 生意気だと頬を抓ったらいつもの如くへらへら笑った。 『俺よりお前の顔の方が忙しいけどな。』 土方の目が見せた事のない柔らかさで微笑んだ。最近三津に仲の良い隊士が出来た。 橘重吾と言い,歳は三津より一つ下。山南の小姓も勤める出来る男でなかなか男前。 三津が土方に拳骨を喰らったのを察知すれば冷やした手拭いを差し出してくれたりもする。 「また喧嘩ですか?」 廊下に座り込み,土方の部屋の障子にもたれかかる三津を見て橘が声をかけた。 「喧嘩じゃないですよ。煩いから出てけって言われたんで。」 いつもの事ですと胸の前でひらひら手を振った。 「だったらここに居なくてもいいんじゃ?良かったらお茶でもご一緒に如何でしょう?」 柔らかい物腰で三津に手を差し出した。 こんな風に誘われるとなかなか気分もいい。 「ぜひ!」

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