何の話し?と騒ぐ宗太郎には拳骨を落として黙らせた。
「だが,あんたを副長の女として顔を覚えている輩が襲って来ないとも言い切れない。
だから気付かれない https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202401180000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/74c4d6be560c0357697fe267b5970966 https://ameblo.jp/freelance12/entry-12837111172.html ようにあんたが店に帰るまで見て来い。
心配性な主人から頼まれたんだが…。
困った事に見つかってしまった。」
斎藤はふぅと小さく息を吐いて宗太郎をチラッと見た。
『…って事は斎藤さんがこっそりついて来てたのは,私が道に迷わないようにと不逞浪士に絡まれた時の護衛の為?
心配性な主人って…。土方さん?』
監視されてる訳じゃないと分かって一安心。
じゃあ三日間の休みは何でだ?
「じゃあ斎藤さんが傍に居てくれたのは知らんかった事にせなアカン訳や。
それにしても何で三日もお休みくれたんでしょうね。」
さり気なく土方の魂胆を探ろうと試みる。
簡単に答えてくれるとは思えないけど,聞かずにはいられない。
「…これも独り言だ。」
『あ,教えてくれるんだ。』「こいつが壬生に遊びに来てからお前に元気がなくなった。」
「こいつちゃう。宗太郎や。」
またも話の邪魔をする宗太郎の脳天に三津の拳骨が直撃。
『こいつ…副長に似てきたな…。』
涼しい顔して拳骨を食らわし,それで?と話の続きを求める三津。
斎藤は小さく咳払いをして独り言を続けた。
「どこか覇気が無くて,溜め息ばかりついている。
きっと町が恋しいんだろう,辛気臭い奴が側に居ても迷惑だから暇をくれてやる。」
三津の耳に届くその独り言は,淡々とした斎藤の声だけど,言葉は土方の物だと分かった。
それは沁み入るように,心の奥にちゃんと届いた。
『心配してくれてはったんや。』
自分の事を思ってくれてると知り,嬉しくて嬉しくて…。
表情は緩みっぱなしになってしまう。
「宗太郎いっぱい遊ぼな!」
気兼ねなく遊んでいいと分かった途端に三津の笑顔は満開。
疑われてる,監視されてる。そんな風に勘ぐった自分は馬鹿だなと笑った。
「おじちゃん,おばちゃんただいまー!!」
三人で店の暖簾をくぐれば,三津の予想通り二人は驚いて言葉が出ない様子。
「今度こそ追い出されたか?」
「違うって…。休みもらったから帰って来たんやんか。」
三津は失礼しちゃうと腕を組んで頬を膨らませた。
「ご主人も女将もご心配なく。よく働いてくれるのでその褒美と思っていただければ…。」
もしかしたらこの二人は追い出されるのを待っているのかもしれない。
三津を囲む二人が,目を細めて笑みを零しているのが微笑ましい。
それを邪魔するのは野暮だ。
和やかな空気からそっと離れた。
何事もなく無事に甘味屋に辿り着いた。後は土方に報告するだけだ。
『こいつに見つかったのは誤算だったがな…。』
首を捻り,ちんまりと椅子に座って嬉しそうに三津を見上げる宗太郎に視線を落とした。
「何見てんねん。斎藤,早よ座れや。」
しっかり目が合うと,宗太郎は口を尖らせながらバンバン卓上を叩いた。
「俺は帰る。まだ仕事があるんでな。」
斎藤は尾行に失敗した腹いせに,ちょっと強めに頭を撫で回してやった。
「もう帰るの?お茶ぐらい飲んで行って下さいよ!」
引き止めようとする手をするりと交わし,斎藤は後ろ手を振りながら暖簾をくぐって行ってしまった。
「うわぁ!久しぶりや,おばちゃんの味!」
三人でとる夕餉。
膳の上に所狭しと並ぶ漬け物や煮物の数々に舌鼓を打つ。
『でも何でこんなご馳走なんやろ?私が帰って来るの知らんかったはずやのに。』
不思議に思ったけど,美味しい料理がいっぱい並んでいるんだからまぁ,いいか。
満面の笑みで口一杯に頬張った。
「それにしても斎藤さんは寡黙な人やなぁ。沖田さんと違った男前やわ。」