その夜は寝苦しくて,三津はなかなか寝付けずにいた。
京の夏は蒸し暑い…。
「暑い…。」
寝間着の胸元を豪快に開き,https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/01/19/162103 https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post503116563// https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12384788 団扇で風を送り込むが,肌に当たるのは生温い空気。
「アカン…水でも飲も…。」
だるい体を起こすと,はだけた胸元を少しだけ整えてから一階の台所へ向かった。
湯呑み一杯の水をぐっと飲み干し,
「ふぅ…」
と小さく息を吐いた。
もう一度寝る努力をしてみるかと,大きな欠伸を一つ。
くるりと踵を返した。
ドンっと背後で音がした。
何かが壁にぶつかったような音に振り返る。
「何…?」
真っ暗闇の中を手で探りながら,勝手口を目指した。
恐怖と好奇心が混じって,三津の心臓は激しく脈打った。
胸の高鳴りをそのままに,ゆっくりと戸を開く。
そっと開いた戸の隙間から,ひょいと顔を出してみた。
暗闇に目を凝らしてみると,壁にもたれかかり,肩で息をする男の姿が見て取れた。
「あのぉ…。」
自分でも不思議なくらい自然に声をかけていた。
静寂に包まれた夏の夜の出来事。壁にもたれ掛かった男に声をかけると相手は豆鉄砲を喰った様な顔で三津を見た。
「大丈夫ですか?」
他に誰もいないかきょろきょろ周りを見渡してから思い切って外に出た。
「君,正気?」
少々はだけた寝間着姿で何の迷いもなく近寄って来る三津に戸惑いを隠せない。
わざわざこんな格好で出て来るとは…。と思いつつ口元は自然と緩んでいた。
悲しいかな男の性だ。
三津はそんな事など気にも留めずしげしげと男の様子を観察した。
そして男が押さえる腕に血が滲んでいるのに気付き目を見開いた。
「怪我してるやないですか!手当てせんと…。」
三津は男を担ごうと脇に体を滑り込ませた。
「何する気?」
自分の体を担ぎ,強引に勝手口から引きずり込もうとする変な少女にうろたえた。
「だから手当てです。朝その辺で死体になって転がってる方が嫌ですもん。」
いいから静かにしてと見ず知らずの大人の男を一喝し,中に引きずり込んだ。
三津は音を立てないように細心の注意を払って二階へ連れて上がった。
「少し待ってて下さいね。」
男を壁にもたれさせて座らせると,いそいそと台所に向かった。
お椀に消毒用のお酒を,湯呑みと桶に水を淹れてそれらを器用に持つと男の待つ二階へ駆け上がった。
もちろん忍び足で。
「お待たせしました。」
とりあえずどうぞと男に湯呑みを持たせて早速手当てに取りかかった。
『飲めと言う事だろうか…?』
三津と湯呑みを交互に見てから一気に水を飲み干した。
男は手際良く手当てを施す手元と緩んだ寝間着からちらちら覗く胸元を眺めつつ,静かにされるがままだった。
はてさてこの娘には警戒心は無いのだろうか?
「普通はこんな怪しい男を部屋に上げたりはしないけど。」
男は独り言のように呟いた。
「これが夢か現か分かってないですからねぇ。普通やないんでしょうね。」
三津もまた独り言のように呟いてくすっと笑った。
それなら仕方ないと男もくすっと笑った。
『あ…笑った。』
三津は下から覗き込むように上目でその表情を映した。
暗くて気付かなかったがよく見れば男前ではないか。怪我ばかりに気を取られ全く見ていなかったその顔。
二重瞼の形のいい目に通った鼻筋と凛々しい口元で見事に整った顔立ち。
俗に言う色男とはこういう人なのかと一人で納得した。
整った顔から手元に視線を戻し
「可愛らしく笑いはるんですね。」
と話かけると
「君も十分可愛いよ?」
凛々しい口元が笑みを浮かべ,さらりと恥ずかしくなる台詞を零した。