何でこの顔はこうも馬鹿正直なんだ。 三津は縁側に腰掛けて自分の頬を摘んでは引っ張った。 「誰を笑わせようとしてるんです?」 「へ?」 にこにこと満面な笑みの総司が三津の隣りを陣取った。 「誰も笑わせるつもりは無いんやけど。」 「そう?睨めっこの練習かと思いました。」 ニッと歯を見せて無邪気な顔を三津に向ける。 ぴったり引っ付いてにこにこ笑い続けた。 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/01/19/163237?_gl=1*s4cyt9*_gcl_au*MTYyMjM0Mjc5LjE3MDExNzAxMjA. https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12384798 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/132611272「…何かいい事ありました?」 「何でですか?」 『沖田さんの顔も正直者なんやな。こんなに笑ってるんやからいい事あったんちゃうんかな。』 多分,桂の事を考える自分の顔はこんな表情なのかもしれない。 『そりゃあ三津さんが帰って来たんですから嬉しいに決まってるじゃないですか。』 三津が甘味屋に帰る時,また甘味屋の看板娘に戻ってくれたらいいって思ったのに。 『もうここに居るのが当たり前になってしまったんですね。』 離れて一刻も経たないうちに三津の姿を探していた。 目の届く所に居てくれないと不安になる。 その矛盾に自分で可笑しくなる。 『あぁ,もう一人いましたね。私以上に三津さんに執着してる人。』 「三津さん聞いて下さいよ。三津さんがいない間土方さんが面白くて仕方なかったんですよ。」 「あ!それっておたえさんの名前ずっと呼び間違えてたってやつ?」 さっきおたえさんに聞いたよと苦笑した。何だか申し訳ない。 「おたえさんだけじゃないですよ。 私も間違えられましたし,誰か後ろを通る度にその人が三津さんになってました。」 流石にぽかんとした。それって重症じゃないか? 「おたえさんを私と間違えるならまだしも…。 他の隊士の皆さんもですか? 勢い余って私らの事をお母さんって呼ぶなら分かりますよ?」 たえはみんなの母親のように働いてる。 それに三津自身も近藤をお父さんって呼びそうになるし。 だけど土方がそこまでなると面白いと言うか…。むしろ怖い。 「あの時は誰を見ても三津さんに見えたんでしょうね。」 寂しすぎて。 煩いだの邪魔だだの,いつも邪険に扱うくせにそこに居るのが当たり前なんだ。 姿が見えなくても,声が聞こえなくても,すぐそこにいると思ってる。 土方は三津に甘えてる。 鬼になるって決めた癖にちゃっかり拠り所を作ってる土方が何だか憎い。 「だから言わんこっちゃねぇ。」 「すみません…。」 仕事に支障は出さないとか言いながら三津は寝込んでしまった。 鼻の上まですっぽり布団を被って不機嫌な顔を見上げた。 「土方さんにうつす前に自分の部屋に戻ります…。」 「馬鹿言うんじゃねぇ。」 起き上がろうとした頭を軽々片手で押さえつけ,元の位置に戻させた。 「うつすなって言ったの土方さんやないですか。」 熱で赤らんだ頬をぷっくり膨らませて睨み付けた。 「いっちょ前に睨んでんじゃねぇ。 お前とは気合いの入れようが違うんだよ。そう簡単に寝込むかってんだ。」 『それに部屋に戻したら見舞いだ何だって理由付けて,下心丸出しの馬鹿共が押しかけるだろうが。』 頭を押さえ込んだ手で額に触れた。 熱はそんなに高くない。 「動けるうちにたえと医者に行って来い。あと気合いも入れ直せ。」 拳骨代わりに叩かれたおでこはぺちっといい音をさせて赤くなった。 「気合い入れ直して治るなら,ゆっくり寝かせてあげたら良かったんじゃないですか?」 来ると分かっていたが,いざ部屋に転がり込んで来ると苛々は倍増する。 「ずっと横で寝てられると仕事に集中出来ないなら,部屋を移してあげたら如何です?」 総司は何を考えてるか読めない笑顔で,土方が口を開く前にズケズケ言葉を突き刺す。 「でも私はここで寝かせてもらう方が安心ですね! 三津さんを一人にしたらよからぬ考えを抱く輩を斬る事になっちゃいますし。」 「そう言うお前もよからぬ考えを抱いてここに来たんじゃねぇのかよ。」 『何なら邪魔者は全て斬り捨ててしまいたいって目ぇさせやがって…。』 弱った三津を看病する気で来たのはお見通しだ。 ついでに稽古もサボるつもりなのも見え見え。 『鬱陶しいから道場に閉じ込めとくか。』 暇なら隊士たちに稽古をつけさせようと考えた時,背中にずっしりと重みがのしかかった。 「やだなぁ。よからぬ考えだなんて…。 私は大大だぁーい好きな土方さんの仕事っぷりに惚れ惚れしに来たんです。」 総司は背後から負ぶさるように抱きついた。 「あれ?言葉にならないぐらい嬉しいんですか? もう可愛いんだから歳三さんは。」 「逆だ…。この苛立ちを誰にぶつけてやろうか。 なぁ?総司。」