Eklablog Tous les blogs
Editer l'article Suivre ce blog Administration + Créer mon blog
MENU

Publicité

「私だって好きでこんな目に遭っ

「私だって好きでこんな目に遭ってるんじゃないもん

いいからこれ解いてくれません?」

 

 

「男なら誰にでもついてく訳?」顯赫植髮

 

 

三津は口をへの字に曲げた。

失礼極まりない言葉にご立腹だ。

 

 

「あのねぇ!」

 

 

「一旦お茶でも飲んで落ち着こうか。そのまま待ってて,逃げたら許さないから。」

 

 

「ちょっと!」

 

 

顔を真っ赤にして反論しようとする三津を見て,吉田はふっと笑って部屋を出た。

 

 

「もう!逃げれる訳ないでしょ!?分かってる癖に吉田さんの馬鹿!!

 

 

閉められた障子に向かって吠えてみるけど虚しくなっただけだった。

 

 

『相変わらず人の話を聞かんし!』

 

 

でも喧嘩別れする前と同じようだった。それだけで三津の顔は綻んだ。

 

 

『ん?でも吉田さんが居るって事はここは。』きっと長州藩邸だ。宿にしては立派過ぎる。

視線をぐるりと巡らせていると吉田が戻って来た。

 

 

「お待たせ。

何?その間抜け面,口が半開きだ。」

 

 

「なっ!」

 

 

笑いをかみ殺しながら吉田は三津の脇に腰を下ろした。

 

 

「そんなんだから簡単に攫われるんだ。」

 

 

更に赤く染めた三津の顔を態としつこく覗き込んだ。

 

 

「意地悪っ!」

 

 

「好きな子ほど苛めたくなる生き物なんだよ,男ってのは。」

 

 

「好き?」

 

 

「もうちょっとしっかりしなよ。危機感って知ってる?」

 

 

その言葉と同時に三津は拘束から解放された。

 

 

「吉田さん,私の話。」

 

 

「あーあ,痕がついた。」

 

 

三津の言葉は右から左。

吉田は三津の足首についた縄の痕を指先ですっとなぞった。

 

 

「くすぐったいっ!」

 

 

「こっちも。」

 

 

身を捩って逃げようとする三津の手首を捕まえて引き寄せた。

 

 

「心配かけないでくれる?」

 

 

その声は三津の耳元で聞こえた。おまけに吉田の心臓の音まで聞こえる。

 

 

息苦しい程に抱きしめられてる。

頭でちゃんと理解出来たのは,布越しで吉田の体温を確認してからだった。

 

 

「それこそこっちの台詞です!そっちこそ急に居なくなった癖に。」

 

 

「嬉しいね,心配してくれてたんだ?」

 

 

あんな別れ方をして,もう会えなかったらどうしよう,不安で堪らなかった。

でも吉田はこうやって飄々と現れた。

それが何だか憎たらしい。

 

 

「心配してくれてる割には危険な事しようとしたよね?

この前一緒に居たの斎藤一だろ?

よくもまぁそんな奴を引き連れて俺の後を追おうとしたよね。」

 

 

「あーあはは。」

 

 

そこは笑って誤魔化した。

 

 

「それにねぇ三津,君はそれ以前の問題だ。

帰って来たら店には居ないし,看板娘から土方の女になってんだよ?

正真正銘の馬鹿だろ。」

 

 

「それは。」

 

 

三津の中でも想定外。土方の女になるなんて思いもしなかった。

 

 

「恩返しって何してんの?体で奉仕でもしてるの?」

 

 

「違います!」

 

 

「当たり前だ。そんな事があってたまるか。」

 

 

吉田の深い溜め息が,三津の頭の上に降ってきた。

 

 

「ずっと言いたかったんだけどさ。」

 

 

「はい?」

 

 

吉田は息を吸ったきり黙り込んだ。

しばらくの沈黙の後,意を決して吐き出した。

 

 

 

……ごめん。」吉田の素直な謝罪に一瞬言葉を失った。

でもすぐに自分も謝らなきゃと口を開く。

 

 

「私の方こそ……っ!」

 

 

そう言いかけたが吉田は三津の後頭部に手を回して胸に抑えつけた。

吉田にとって三津からの謝罪はいらなかった。

 

 

『勝手に傷付けて居なくなったのは俺だ。』

 

 

どれだけ後悔して,どれほど京へ戻る事に執念を燃やしたか。

 

 

やっと一つ思いを遂げた。

 

 

……ただいま。」

 

 

『帰って来たよ君の所に。

今まで離れてた分,抱きしめるだけじゃ足りないけど。』

 

 

「んー!」

 

 

声にならない声でぽかぽか胸を叩く三津に微笑んだ。

 

胸を強く押され,ようやく腕の力を緩めた。

Publicité
Retour à l'accueil
Partager cet article
Repost0
Pour être informé des derniers articles, inscrivez vous :
Commenter cet article