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「ちゃいますよ,私の家に帰

「ちゃいますよ,私の家に帰るんです。」

 

 

甘味屋に逃げ帰れば新選組に連れ戻される事はない。

三津はそう考えたんだと吉田は解釈した。https://www.easycorp.com.hk/en/deregistration

 

 

「三津,藩邸に帰ろう。俺と一緒にいろ,今度こそ守るから……。」

 

 

このまま易々と離したくなんか無かった。

桂との仲だって認めてない。自分の傍に置きたい。

 

 

「駄目ですよ,これ以上迷惑かけたくないんです。私がいたら邪魔になってまう。」

 

 

三津は精一杯吉田の胸を押し返した。

 

 

「やっぱり私の居場所はあの家だけみたい。

だから吉田さんがみたらし食べに来るの待ってますから。」

 

 

三津があまりにも穏やかに笑うから,吉田は我を通す事が出来なかった。

 

 

「店から居なくなってたら,何処に居ようが見つけ出してやる。」

 

 

そして居なくならないように離さないと誓った。

 

 

「助けてくれてありがとうございます。」

 

 

吉田からゆっくり身を剥がし,ペコリと頭を下げた。

三津はよろけながらも自分の帰る場所を目指した。

 

 

「うぅ寒い。」

 

 

もう寒いってもんじゃない。風が吹き付ける度に痛いんだ。

 

 

暗い夜道が怖いとも言ってられない。

あちこちから来る痛みに耐えながら,がむしゃらに走った。

 

 

見慣れた通りに差し掛かった時にはどれだけ安心したか。

 

 

「おじちゃんおばちゃん。」

 

 

三津はよろよろと店に近付いて戸を叩いた。

 

 

「おじちゃんおばちゃん開けて。」

 

 

気付かれなかったらどうしようと思いながら,ドンドンと拳を打ち付ける。

 

 

「開けて!私,三津やで!!

 

 

戸にすがり付いて叫んでいると焦ったような足音がして戸が開いた。

 

 

「三津!?

 

 

「あー死ぬかと思った。」

 

 

二人の顔を見てホッとしたから,三津は膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

ーー翌日の長州藩邸。

 

 

予定では三津をどうするか話し合う為に設けられた場。

 

 

「稔麿,知りうる全てを話しなさい。」

 

 

その中心に居るのは吉田だった。『どうせ信じる気は無いだろうよ,この親父は。』

 

 

桂を一瞥してから,吉田はその脇に座する乃美を見た。

 

 

「土方の女が居なくなり,うちの藩士がそこの土手で斬り殺されていた。」

 

 

「乃美殿,それは私が彼女を逃がす手助けをし,邪魔をしようとした彼らを殺したと言いたいのでしょうか?」

 

 

「だから知りうる全てを話せと言っておる。

でなければお前を裏切者として処罰する事になる。」

 

 

乃美の厳しい口調に部屋の空気が張り詰める。

 

 

『また面倒起こしやがってとか思ってんだろうな。』

 

 

吉田はふぅと小さく息を吐き,もう一度桂を見やった。

桂は端正な顔を崩す事なく,凛としていた。

 

 

桂は桂で何食わぬ顔をしながら色々と考えを巡らせた。

 

 

『ひねくれ者の稔麿だ,素直に全てを語るとは思えんが……。』

 

 

それでも三津の安否を知るのは吉田だけ。

ずぶ濡れで着物には返り血,そんな姿で帰って来た吉田に聞きたい事は山程ある。

 

 

「単刀直入に言うとアイツらを斬ったのは私です。」

 

 

「なっ!」

 

 

周りがざわめくと,吉田はうんざりした顔で咳払いをした。

 

 

「人の話し聞く気ある?」

 

 

鋭い視線をぐるりと巡らせて騒ぐ面々を黙らせた。

 

 

「何故斬った。」

 

 

「アイツらは今日処遇が決まるはずだった三津を勝手に連れ出した。」

 

 

「それだけで仲間を斬ったか!!

 

 

乃美と吉田のやり取りに周りはハラハラしっぱなし。

桂は目を瞑り無言を貫いた。

 

 

「アイツらは口を塞いで手を縛った三津を川に棄てたっ!!

 

 

吉田は声を荒げて,強く握った拳を畳にぶつけた。

流石に桂の目も見開かれた。

 

 

「足の縄は無かった。それは犯そうとしたからでしょうね,極寒の中よくやるよ。

俺は相応の罰を与えただけだ。

彼女は土方の女なんかじゃない。甘味屋の三津だ。」

 

 

『稔麿が気付かなければ,今頃亡骸で見つかったのは藩士ではなく,三津の方だったって訳か……。』

 

 

桂は沸き上がる怒りを抑えて平静を装った。

 

 

「稔麿,もう良い下がりなさい。しばらくは謹慎だ,藩邸から出る事を禁じる。」

 

 

吉田は無表情で立ち上がり,部屋を出たが,障子を閉める時に怒りをぶつけるのは忘れなかった。

 

 

「随分と甘い……

そう言えばあの娘,桂の玩具だと稔麿が言ったそうじゃないか。」

 

 

 

釈然としない乃美の嫌味の矛先が桂に向けられた。

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