その影に気付いた宗太郎がいち早く声をあげた。
「総司ー!!!」
「えっ沖田さん?」
宗太郎の声に驚いて石段から立ち上がった。
並んでいた二つの影がゆっくり境内に踏み込んで来た。
「ご無沙汰してます。」https://plaza.rakuten.co.jp/johnsmith786/diary/202401180000/ https://ameblo.jp/johnsmith786/entry-12837108599.html https://www.liveinternet.ru/users/johnsmith786/post503110683//
総司は子供相手にも関わらず深々と頭を下げた。そして頭を上げて眉尻を垂れ下げた情けない顔で笑った。
宗太郎に最後に会ったのは怒鳴られたあの日。
総司にとっては苦い記憶なのに,宗太郎本人はそんな事忘れてしまったのか遊んでくれと総司の着物を掴んで離さない。
「斎藤さん!遊びに来てくれたんですね。二人で来るの珍しいですね!!」
子供達に集られる総司を横目に斎藤はまっすぐ三津の方へやって来た。
「俺は仕事がある。でっかい子供がお前や宗太郎に会いたいと駄々をこねるからここまで付き添っただけだ。
どうした今日は走り回らんのだな。」
石段から動かない三津を不思議に思った。
「今日はちょっと。」
へらっと笑って言葉を濁すから,
「あぁお馬か。」
「なっ!?ちゃいます!!」
顔を真っ赤にして否定したら冗談だと笑われた。
まさか斎藤にそんな冗談を言われるなんて思いもよらず,口を尖らせて小さく"もう…。"と言って目を伏せた。
『お?』
その表情に斎藤は違和感を覚えた。何かが違う。
三津は何ですか?と上目で斎藤の顔を見つめた。
『色気が出てきた気がするのだが…。』
そのじっと見つめてくる目さえ以前にも増して惹き込んでくる気がした。少なくとも前より断然女として見れる。
『そう言えば副長にあったのだったな…。そうか,そう言う事か…。』
何だか複雑な気分。三津を目に映しながら思い出したのは盆屋での姿。
『あの時は大して色気なんざ感じなかったが今回はやはり完全に食われたようだな…。』
ついうっかり乱れた三津の姿を想像してしまった。すると三津が眉をしかめて口を開いた。
「あの…。斎藤さん…鼻血で出ますけど…。」
「何!?」
慌てて鼻を触って確かめると手のひらにべったり血がついた。
『想像しただけで…。』
鼻血を出すとは情けない…。斎藤は力なく項垂れた。「どこか悪いんですか?調子悪いなら土方さんに言って少し休ませてもらった方が…。」
三津は手拭いを取り出して斎藤の顔を覗き込んだ。
動かないでと肩に手を置き,手拭いを優しく斎藤の鼻にあてた。
「鼻血ごときで隊務を休めるか。」
至って冷静を装っているけど内心は穏やかじゃない。身を退いても三津の体がついてくる。
『近い近い…。』
このままじゃ鼻血だけじゃ済まない気がして斎藤は三津の手から手拭いを奪い取った。
「悪いが借りるぞ,じゃあな。」
「顔赤いですよ?」
本当に大丈夫?と心配している声がするが,最早まともに三津が見れない。
『誰のせいだ馬鹿者!!』
これ以上醜態は晒すまいと踵を返して足早に境内から出ていった。
「あっ!斎藤どこ行くん!!」
捕まえる間もなく通り過ぎて行った斎藤の背中に宗太郎が叫んだ。
「斎藤さん今日はお仕事やねんて,また来てくれるし。」
三津はしゃがみこんでわがまま言わないのと宗太郎のほっぺをきゅっと摘まんだ。
「それに沖田さん居てはるやん。ね!お久しぶりですね。」
三津はにっと笑って総司を見上げた。
「はっはい!ご無沙汰してます!」
総司は身を固くして深々と頭を下げた。
三津はくすくす笑って立ち上がると,こちらこそご迷惑おかけしましたと頭を下げた。
「迷惑なんて!ただ心配で心配で…。何があったかも知ることが出来なかったし怪我の具合も何も…。」
『あぁそうや…。おじちゃんもおばちゃんもみんなの事門前払いしてたんやっけ…。』