何も伝える事が出来なかったのはこちらの事情。落ち込んでしまった総司を見て申し訳なく思う。 「いつもながら土方さんの女に間違われたけど私が否定するから川に捨てられただけで…。」 「川に捨てられただけって…!」 そんな酷い目に遭わされたのにへらっと笑う三津に憤りさえ感じた。 でも憤りを向けるべきは三津ではなく守れなかった自分だ。 「もう二度と会えないかと思いましたっ…!生きててっ…良かっ…たっ!三津さんが居なきゃ私っ…!」 "駄目なんです,好きなんです…。" もう想うだけじゃ足りないのに言葉に出来なくて,行き場を失った想いの丈を強く抱き締める事でぶつけた。 これが精一杯の形だと。桂との関係が深くなったと同時に悩む事が増え,それを誰にも相談出来ずにどんどん抱え込んでいた。 https://www.bloglovin.com/@johnsmith4486/12384752 https://johnsmith123.pixnet.net/blog/post/132607249 http://johnsmith.e-monsite.com/blog/--3.html 新選組のみんなともちゃんと言葉を交わせる関係に戻れた。 総司が甘味屋を訪ねて来てくれるのも,お寺に遊びに来てくれるのも嬉しいし楽しい。 だけど楽しい時間の後には決まって不安と罪悪感がやって来る。 何食わぬ顔をして接しているけど,彼らが躍起になって追っている相手と密な仲。 嘘をついている,騙していると言う事実が三津の心を締め上げる。 久しぶりに顔を合わせた総司は,三津を抱き締めてその肩に顔を埋めて泣いていた。 宗太郎に"泣くなや大人の男の癖に"と喝を入れられて漸く離してくれた。 『沖田さんよっぽど心配してくれてたんやなぁ…。』 そんな心の優しい人を騙しているのだ。 三津は真剣に悩んでいるのに,その憂いを帯びた表情が"大人っぽくなった"だの"色気が出た"だのと密かに話題になっていた。 三津が恋煩いだと客達の間で噂になった。 相手は間違いなくあの色男だ。 そんな色男からのお遣いがちょくちょくお店にやって来る。 「三津さん聞いて下さいよぉ!」 文を届けに来たついでに,表の長椅子に腰掛けて日頃の愚痴をちょろっと溢して行くのが最近の彼の日課である。 遣いに来るようになった当初は桂からの文を届けてすぐ帰っていた。 長居しないようにと釘を刺されていたし。 『いいかい?三津の仕事の邪魔はしないようにすぐに戻りなさい。 三津がゆっくりしてってと言っても駄目だからね。』 駄目だからと三回ほど念押しされた。何か返答が欲しい内容の時だけ"居てよし"と言われた。 その時は三津が文に目を通し終えるのをお茶を飲みながら待っていた。 『桂さんは見かけによらず無茶するし猪突猛進だけどここまで執着するとはねぇ…。』 ちょっと度が過ぎてないか?と溜め息をついた。 「あ,ごめんなさい…。こんなお遣いばかり飽きますよねぇ…。」 突然の謝罪に伊藤は慌てて首を横に振って否定した。 桂からの文を大事に胸に抱えて申し訳なさそうな三津を前にあたふたした。 『泣かせたらまずい…非常にまずいっ!!』「違います!違います!だから泣かないで!!」 「泣いてませんよ?」 「あぁ…はい…。そうでした…。すみません文を届けるのがつまらないとか思った事はないです。」 それは嘘じゃない。見ていて面白いから。 何故幾松よりも三津なのか知りたくて仕方ない。 『なんて言える訳ないし…。』 最近疲れてるんですと苦笑いで誤魔化した。 すると三津がまた眉を八の字にした。 「そうやったんですね…それやのにこうして届けてくれはって…。 あの,出来る事なんてそんな無いけどお話相手くらいにならなりますから。」 愚痴とか聞くし!と力強く拳を握った。 だけど特に三津に話すような事はない。話すより聞きたい事の方がある。と伊藤は思うが折角三津がこう言ってくれたのだ。 『何か適当に話しとくか…。』 その適当に…のつもりで話したら出るわ出るわ日頃の愚痴。