桂は素早く刀を鞘に納めると吉田と共に素早く走り去った。 闇に溶けて行く背中を見て土方は盛大に溜息をついた。 「……ふざけた野郎だ。その癖馬鹿みてぇに強い。」 背中に受けた衝撃と鳩尾に食らった一撃が体に響く。 土方は刀を鞘に納めるとそれを支えにゆっくりと立ち上がった。 右の脇腹に手を当てると薄っすら血が滲んでいた。 「止血を……。」 「なぁに掠り傷だ。あんだけ殺意剥き出しにしといて俺を殺す気なんか無かったさ。 ありゃ三津は自分のモンだって知らしめに来ただけだ。 http://janessa.e-monsite.com/blog/--101.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/143db7d1-1548-4e80-b812-6a9ebd91aa06/RqC80mFjDXqfnSfOOK3_3-4R0zjvVBQQ0uuKYZ5FKCk2PDxDnmDFDxdtHQ https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180355153 拷問の敵討ちに来ると思ってたのにあてが外れた。」 「敵討ちなど三津が望んでない事を重々承知なのでしょう。惚れた男の弱みでしょうか。」 「ここで俺を殺らなかった事を後悔させてやるよ。 あーいってぇな畜生!」 「あー腹立つ。」 屯所に戻った土方は近藤の部屋で自ら傷に薬を塗り込んだ。 桂とやり合ったと聞いて自然と他の幹部も集う。 「うわぁこの背中の痕痛そ……。」 藤堂が背中の二本の赤黒く浮かび上がった痕を突いた。 他の面子も覗き込む。土方が背中に二発も食らうなんて。 「あんなふざけた男に一太刀も浴びせられなかった。」 情けねぇと自分自身を鼻で笑った。 力でも瞬発力でも負けていた。完敗だった。「それで歳,桂がお三津ちゃんを攫った目的は何だった?」 近藤の質問に土方はふんっと鼻を鳴らした。 「大方斎藤の憶測通りだ。三津が欲しかっただけだ。アイツは去年の夏から忍んでたんだとよ。」 それを聞いて近藤は豪快に笑った。 「本当に敵ながら天晴だ。お三津ちゃんに危害を加える気がないのには安心だが,それよりも桂をも惑わすお三津ちゃんには感服だ。 それで……お前はどうするつもりだ?」 「やられっぱなしも癪なんでね。やられたらやり返すまでよ。」 目の奥を光らせて口角を上げるのだが, 「そりゃ桂に寝取られたなんて言われたら黙っていられないですよね……。 おまけに後傷……。」 憐れむような総司の目に見つめられ額に青筋が浮かぶ。 「おぉ……忘れるとこだったぜ……。後傷?は!背も向けてなけりゃ斬りてもねぇよ! あの野郎次は絶対斬るっ!!!」 「その時は私もお供させてくださいね!斎藤さんも狡いですよ一人だけついてくなんて。 桂小五郎,私も手合わせ願いたい。」 土方が全く歯が立たなかった相手となれば格段にワクワクする。 「そう焦んな。嫌でもその時は来るさ。もし来なければ作るまでよ。」 「いやぁ久々に痺れたね。」 桂は楽しかったと言わんばかりに声を弾ませた。 ここまで来れば大丈夫かなと走る速度を落として両手をぷらぷら振った。 「右手ぐらい斬り落とせば良かったのに。」 「三津が泣いてしまう。 それに最高潮に怒りを孕んでいながら斬る事さえ出来ず,背中に打ち込まれた方が土方君には屈辱だと思うね。」 そう話す桂の横顔は本当に楽しそうに見えた。 「それよりも三津は自分のモノだと公言出来た方が嬉しいんでしょ?ある意味それもアイツらには屈辱でしょう。」 桂はまぁねと笑った。 「奴らはまた明日から私と三津の行方を追うのに躍起になるだろう。私が留守の間に三津の居場所がバレなきゃいいが。」 「無作法な奴らですからね。怪しいと見た所には土足で踏み込む可能性はあります。 もう藩邸に置いとく方がいいんじゃないですか?」 その方が吉田にとっても目が届いて安心出来る。 「うーん……明日乃美さんにも相談してみるよ。」 別に連れてくのは構わないが藩邸で何をさせるかが桂の頭を悩ませた。