それが出来ない……いや呼びたくないのを分かっていてそう言ってくる吉田を一睨み。
「詰めが甘いからそうなる。」
「……はい。」 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/142358407 http://janessa.e-monsite.com/blog/103.html https://www.evernote.com/shard/s514/sh/c40de591-8dae-8a2a-2904-d048fa14ca17/ik5R2wbjyTNMIIqzSEyH9kYs68aAyw-NfBSElNnAfLLx5bx1EZZpLUMK5w
それは何も言い返せない。
「私は構わん。あとは三津さんに任せる。」
『仕方ない……三津と話すか……。』
その前に白粉の匂いを何とかせねば取り合ってももらえないだろう。桂はいそいそと着替えに行った。
袴から濃い灰色の着物に着替え三津の部屋までやって来た。
「三津……ちょっといいかい?」
「どうぞ。」
少し緊張しつつそっと障子を開くと黙々と針を動かす姿があった。
「こんな遅くまで……。それは誰のかな?」
「んと……誰やったっけ……。何か生い茂ってる感じの名前の……。」
『生い茂る?』
どんな奴だと考えた末どうにか絞り出した。
「杉山か?」
「あぁ!そうだ松助さん。」
三津はスッキリしたと一瞬笑みを浮かべたがまた静かに針を動かした。
『目も合わせてくれない……。』
三津の不機嫌さをビシビシ感じて肝心な話を切り出せない。それに何故杉山を松助と名前で呼んだのか。
杉山でいいじゃないか。
「それで何の用ですか?」
「あ?あぁ今日は宮部さんに会ってだな,その宮部さんが気を遣って幾松を呼んでくれて。」
自分が嫉妬なんか抱いてる場合ではなかった。三津の機嫌を直しつつ例の件を伝えねばならない。
「幾松さんと一緒やったんですか。それなら私は何も口出し出来ませんよ。
私よりも前から懇意にされてはったんやし,それに私も壬生では斎藤さんの優しさに甘えてたんでおあいこですねぇ。」
『冷たい……。三津が冷たいぞ……。しかもここで斎藤君を出してくるのか……。それに全然こっちを見てくれない……。』
「それで……宮部さんが三津に会いたいと……。幾松も元気になった君の姿が見たいにと言ってて今度の会合に連れて来て欲しいと……。」
それを聞いて三津の手が止まった。
「そっか……幾松さん壬生まで会いに来てくれはったのにあれ以来お礼言えてないんや……。
それなら会ってお礼せんと駄目ですね。
でもそんな席に私が行ってもいいんですか?」
そこで漸く三津が顔を上げた。首を傾げてどうしましょう?と訴えてくる。
「乃美さんは三津に任すと。」
「乃美さんも一緒ですか?それなら行きます!」
三津は笑顔でそう言った。やっと笑顔を見せてくれたのはいいが気になるのは,
「何故乃美さんが一緒ならいいんだい?」
その一点。
「だってその宮部さんて方と幾松さんと小五郎さんだけやったら私めっちゃ居辛いやないですか。
私だけ場違いです。」
『あぁそう言う事……。』
「三津は私の為に居てくれるだけでいいんだ。」
甘い言葉で三津を引き寄せようと試みるが,
「私にはそれしか出来ませんからね。さぁ!もう遅いですから休んでくださいね!私も朝早いですから。」
笑顔でいて出て行けと言わんばかりの空気を漂わせた。
「そうだね……遅くにすまない……。」
触れさせてももらえずに桂は泣く泣く部屋を出た。
『ちょっと意地悪し過ぎてもたかな?』
だけどもそうせずにはいられなかった。
白粉の匂いを嗅ぐと湧き出て来る劣等感。幾松は自分に無いものを兼ね備えている。
幾松の事は嫌いじゃない。だけど嫌いたくなる。『後から現れて小五郎さんに大事にされて……幾松さんの方がよっぽど嫌な思いしてるやろうなぁ……。』
だったらその幾松が抱える嫌悪を自分は受け止めなければいけないのではと深く考えてしまう。
『明日またサヤさん達に聞いてもらお。』
そう,自分には頼れる相手が出来た。その二人を思い浮かべるだけでも幾分気持ちが軽くなるんだ。
翌朝三津は女中業をしに部屋を出る。左手はやっぱりあまり使えないが役割分担で支障のない仕事を貰った。
洗濯でも三津が洗い二人が水を絞り三人で干す。
「女子達の戯れはいい眺めだなぁ。」