こうして入江とアヤメを見ているとちぐはぐなようでお似合いだよなぁと思う。きっとアヤメはまだまだ馴れないだろうけど,そこは入江が上手く合わせて引っ張ってくれるんじゃないか。
「あの二人いい組み合わせだと思うんだけどねぇ。」
「吉田さんもそう思います?」 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180361521 https://mathew.blog.shinobi.jp/Entry/2/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-84.html
胸の前で腕組みをしてにやにやしながら二人を見つめる吉田にやっぱりそうですよねぇと三津はうんうんと頷く。
「あの二人がくっついてくれる方が俺としては安心だよ。三津にちょっかいかけなくなるだろうから。」
『あぁそういう事ね。吉田さんの都合的にね。』
渇いた笑いでそーですねと棒読み感丸出しにしていると低い声で“三津”と名前を呼ばれた。その声色にしゃきっと背筋が伸びた。きっと今の返答がまずかった。怒らせてしまったかもと身構えた。
「次は紅葉狩りだな。その前に何か祭りがあったな。」
「あっ祇園祭ですね!鉾が建ちます!」
「それを一緒に見物しようか。」
吉田は次の予定を考えていた。三津の棒読みなどちっとも気にしていなかった。
「いっぱい思い出作ってくれるんですね。」
それが嬉しかった。今日もいい思い出になる。しばらく経った時に,あの時はあーだったこーだったと笑いあって話せるのが楽しみになる。
「当たり前だろ。一年中お前との思い出で埋め尽くすつもりだ。どれを思い出してもお互いを思い出すように。」
「平然とこっ恥ずかしい事言わないで……。」
多分ちょっとした台詞でも言われて印象に残ったものは間違いなく思い出す。
「いくらでも言う。お前が何かを思い出す度に俺の事も一緒に思い出すように。新ちゃんはそういう事言わなかったか?」
「言わへん。そんなん言う人ちゃうし。」
新平のあの真面目な性格でそんな台詞吐かれたら卒倒してしまう。精神的におかしくなったのか,はたまた変な女の入れ知恵かとも思ってしまう。
「じゃあ尚更言うよ。それに三津が無理して笑わないでいいように俺がずっと笑わせてやるよ。」
吉田は三津の顔を覗き込んできゅっと頬を摘んだ。
「ずっと笑わせられるのは困る……。」
三津は吉田の目を見れなくて赤くなった顔で目を伏せた。
そんな二人を久坂が目を細めてじーっと見ていると隣りでサヤが困ったわと頬に手を当てた。「桂様から三津さんの様子を報告するよう頼まれたんですが……吉田さんとベタベタ恋仲のように仲睦まじくされてたなんて言われへんわぁ……。」
『サヤさん全然困ってない……。寧ろ面白がってるだろ。そう報告した時の桂さんの反応を思い浮かべてるだろ……。』
実際サヤは全く困ったような表情をしてない。眉尻を垂れ下げてはいるがその目は嬉々として吉田と三津の姿を捉えている。
するとその視線に気付いたのか三津が吉田の手を振り払って久坂めがけて駆けて来た。
「兄上!兄上も一緒に思い出作ってくれますか?」
久坂の腕に縋りつき黒目を潤ませ見上げてくる。
「もちろん。仰せのままに。」
何の思い出かは分からないが可愛い妹がそう言うんだ。条件反射で頭を撫でていると背筋が凍るような言葉が耳に届いた。
「しっかり……報告させていただきますね。」
ゆっくり視線だけを動かせばそれはそれは愉しそうに笑うサヤと目が合った。
「サヤさんこれは不可抗力と言うもので。」
「いえ,三津さんの行動を報告しますんで腕に縋りつかれていたのは言わんと。あ,それで目尻下げて頭撫でてはったのは内緒にしときます!」
『三津さんが腕に縋りついたところでもう何言われるか分かるだろ……。鬼だこの人……。』
さて,報告後の久坂の運命や如何に。
その晩寝る前に桂から明日の午後から新平の所へ行こうと誘いを受けた。
「行きます!きっとあの木も綺麗に咲いてますよ。」
三津は布団に潜り込んで目を細めた。桂も三津の方へ体を向け,片腕を枕にして横たわった。
「今日は楽しかった?」
「はい,吉田さんと久坂さんがこれからも思い出を作ってくれるって。」
あまりにも嬉しそうに言うもんだから桂の嫉妬心がちくっと刺激された。
「そう。じゃあ私とはそれ以上に残さないとね。そうだ今日は私達の思い出を振り返りながら寝るかい?」
出逢った頃を思い出して初心に返ろうじゃないか。今よりも初々しかった三津の反応を思い出すと顔の筋肉が機能しない。
「三津が私を部屋に連れ込んだ所からにする?」
「いや……今日は寝ます。おやすみなさい。」
桂の魂胆は分かっている。からかわれる前に意識を飛ばそう。三津は布団を目深に被って現実とさよならしようとした。