死んだと思った入江が帰って来た。笑った三津はすぐにぼろぼろ泣いてその体に抱きついた。
「遅くなってすみません。傷の治りが遅くて……。随分と時間がかかってしまった……。」 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202403290000/ https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/03/29/010754?_gl=1*14kbcg6*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12846198932.html
少しだけ辛そうな声に三津はハッとして体を離した。
「もしかしてまだ治ってないんじゃ……。」
入江は否定も肯定もしないで笑っていた。否定しないのならきっと万全ではない。
三津は慌てて入江を中に引っ張り込んで傷を見せろと迫った。
「凄くお見苦しい物をお見せしますが……。」
入江は苦笑いで帯を緩めて上半身を露わにした。
「これ……。」
「鉄砲玉にやられまして……。」
痛々しい縫合の痕に三津はまた泣きそうになった。これで良く生きて帰ってきてくれたと。
「運良く戦火に巻き込まれた人の治療に来ていた医者に拾われまして一命を取り留めました。
昨日まで療養させてもらってたんですが幕府の連中が生き延びた長州軍をわざわざ取り締って回ってまして。他の患者の迷惑にならないように抜け出しました。」
それから自分が寝たきりだった間に状況がどれだけ変わったのか確認しつつここへ来たと言った。
「そうですか……ここでしっかり癒やしてください。あ,嫌やわ気が動転してお茶も何も出さんと……外暑かったでしょ?ちょっと待っててくださいね。」
三津が席を立ったところで入江は着物を着直した。
「あんまりいいお茶ちゃうけど。」
三津は水出し茶を出した。入江がそれを一気に飲み干すのを嬉しそうに目を細めて見つめた。
「あんまり見られると恥ずかしいんですが……。三津さんはずっと一人でここに?」
三津は桂が出石へ行った事,サヤとアヤメが来てくれている事を順を追って話した。
「そうでしたか……。玄瑞の事は……。」
「小五郎さんからもう戻って来ないとだけ……。」
桂は言葉を濁したようだが入江は正直に伝えようと思った。
久坂はあの時,“妹には怒られると思う”と言っていた。それは自分の最期を偽り無く伝えて欲しいんだと受け取った。
「玄瑞は自刃しました。貴女は怒るかも知れないが文ちゃんは分かってくれると言ってました。それに最期は潔く逝くと決めてたと。
そんな兄を馬鹿だと思いますか?」
「切腹が阿呆らしいって言うのは私の勝手な考えです。私がそう思おうと最愛の奥様がそれに理解を示してるなら私は何も言えません。
何も言えませんけど阿呆やとは思います。」
「思うんだ。」
入江はやっぱり三津さんだなと笑った。目の前の三津がいつも通りの三津で,笑って会話してくれてるのが堪らなく愛おしくて,入江は胸がいっぱいだった。
「三津さん,一つお願いがあるんですけど。」
「何ですか?」
首をこてんと傾ける仕草でさえ愛おしくて悶えそうになる。
「本当は出立の時にお願いしようと思ってた事なんですが,お帰り九一と名前で言っていただけませんか?
あの時必ず帰って来るから帰って来たらそれを言ってくれ。とお願いするつもりでした。」
入江が照れ臭そうに笑うのを見て三津も微笑んで頷いた。そんなのお安い御用だ。
「お帰りなさい,九一さん。」
「あー……その笑顔で言われると我慢できなくなるけど今は汗もかいて汚いので我慢します……。」
「何の我慢か分からんけど良かったら汗流します?傷も綺麗にしてる方がいいし背中流しますよ?」
「えっ何でそんなに大胆に誘ってくるんです?私死ぬの?明日死ぬの?」
「水風呂でいいですね?夏ですもんね。」
三津は軽く聞き流して着替えを用意して入江を浴場に連れて行った。
「痛かったら言ってくださいね?」
背中にもまだ生々しい傷が残っていて気を遣って声をかけたのに,
「ある程度の痛みなら耐えられますよ。それにちょっとぐらい痛くされた方が気持ちい……。」
「ちょっと黙って?」
最後まで言わせなかった。痛ぶられる事に悦びを感じる性癖は健在らしい。
「今日はアヤメさんも帰って来るんやから絶対そんなん言ったら駄目ですよ?」
「ねぇ三津さん覚えてます?川遊びに行った時私が三津さんにして欲しいって言ったあれ。」
「無視しないでよ。」