「私のを見て大した事ないなって鼻で笑って欲しいって言う……。」
「見ぃひんしそんなん言わんっ!!絶っ対振り向かんといて下さいよ!?」
腰に手拭いを巻いてもらってるとは言えそんな物あって無いような物だ。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202403290001/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/f3b03a2f3a5f54025ad5bf6ca63b5cda https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/03/29/010930?_gl=1*muawqr*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU.
「え?何ですか?」
入江は爽やかな笑顔でわざと上半身を捻った。
「ぎゃあ!変態!」
その爽やかな顔に張り手を食らわした。手加減なしでお見舞いしたのに入江は笑顔を崩さなかった。
「あー幸せだ……。」
「痛くて幸せってホンマにどんだけ……。」
「違いますよ。三津さんの所に帰って来れて,またこうやって笑いあえて幸せなんです。
言ったじゃないですか。三津さんが大好きだって。」
そう言われれば出立の時にさらっと言われた気がする。
「もしや忘れてました?」
今度は全身で三津の方へ振り返った。
「ぎゃあ!変態っ!」背中を流すなんて言うんじゃなかった。先に居間に戻った三津はげっそりへたり込んだ。
「三津さん,これ着て良かったんですか?桂さんの……。私の匂いがついちゃいます。」
桂の着物に身を包んで居間に戻って来た入江はどこか落ち着き無くその着物を見ている。
「あぁ,いいんです。いつ帰って来てもいいように天気のいい日は外に干したりしてるからだいぶ薄れてきてるし。それに大事にしまってても匂いっていずれ消えちゃうんで。」
新平の匂いも消えてしまった。それを知ってるから悔しいけど諦めもついていた。また帰って来てくれた時にその匂いに包まれればいいと言い聞かせた。
「そっか……でも今はまだ残ってますから。どうぞ。」
入江は両手を広げた。
「今ならまだ桂さんに抱きしめられてる気分になれますよ?」
三津はその誘惑に必死に耐えた。そんな三津を見て入江は呆れたようなちょっと困ったような顔をした。
「三津さん,寂しいって想いも吐き出していいんじゃないんですか?そうすれば楽になると教えてくれたのは三津さんなのになんで我慢するんです?」
「だって……。ここまで我慢してきたのに……今甘えたらこの先耐えられる自信ない……。」
間違いなく寂しさに押しつぶされる。寂しい会いたいが抑えきれない。その痛みに耐えられない。
「我慢しなくていいよ。この一ヶ月程……よく耐え抜いたな。私にぶつけて来い。寂しい会いたい辛いを,何度だって私は受け止める。私だって三津の受け皿になる。おいで。」
「……っ入江さんの阿呆ぅ!!」
三津はその腕の中に飛び込んだ。桂の匂いに加えて入江の体温がある。欲しかった温もりがある。
「暴言は私にはご褒美だ。」
「阿呆っ変態っ!」
「ありがとう。」
腕の中でわんわん泣きながらも暴言をくれる三津を愛おしそうに見下ろしながらしっかり腕に力を込めた。
ひとしきり泣いた三津は疲れきって入江の胸にもたれた。泣くと怒るは本当に体力を使う。
「ちょっとは落ち着いた?」
「はい……ありがとうございました。」
三津は泣き濡れた顔を手の甲で拭った。鼻水まで垂らしてみっともないやと懐から手拭いを出して顔を覆った。
「いつでも胸貸すから我慢はするな。」
「さっきからため口。」
三津は鼻をすすりながらにっと笑った。
「遠慮する相手が今はおらんからな。」
入江もにっと笑って鼻が触れる距離まで顔を寄せた。「待って?距離感は保って?」
三津は入江の胸をぐいぐい押してちょっとは遠慮してくれと訴えた。
「私の思う三津との正しい距離感はこれだ。」
本当に怪我が完治してない人間か?ってぐらいの力で引き戻されてピタリと密着する。
いくら好きな相手でもこの真夏の暑い時期には遠慮したい距離だろうよと三津は思う。
「私の思う入江さんとの正しい距離は入江さんの大刀三本分です。」
「遠いな。結構遠いな。さては心の距離はそれよりも遠いな?」
「分かってるやないですか。」
「分かってるけど分かりたくない。」
「じゃあその性癖治してくれたらちょっとは譲歩します。」
「やっぱりそこかー。」
何だこのやり取りは。冷静になると馬鹿馬鹿しくて笑えてきた。
「笑った。可愛い。」