「九一さんありがとう。私分かりました。もう納得しました帰りましょう。」
そう言って笑顔を向けたが,今にも涙が溢れそうで,すぐに顔を俯かせて三津は海に背を向けた。
「嫁ちゃんっ!」
自分の横を通り過ぎて足早に立ち去ろうとする三津に山縣が寄り添って,入江はその後ろを歩いた。
「何であんなきつい言い方したそ?確かに嫁ちゃんお節介な所あるけど別に自己満足でやりよるんやないやん。」
屯所に戻り部屋に篭った三津を心配しつつ,山縣は入江の後を追って自室まで入り込んだ。
壁にもたれて胡座をかく入江の前に仁王立ちであの言葉の真意を聞き出そうとした。
「それは分かっとる。でも今回みたいな問題にわざわざ三津が飛び込む必要ない。」
入江は顔を背けて山縣の方を向く事はなかった。https://classic-blog.udn.com/3bebdbf2/180552892 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/5/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-91.html
「それはそうでももっと優しい言い方あったやろが。お前らしくない。」
呆れたような溜息と共に吐き出された言葉に入江は視線だけ寄こした。
「お前の言う私らしいって何よ。三津は理解したそっちゃそれでいいやろ。もう出てけ。」
「あ?嫁ちゃん涙目やったやろが。泣かせといてなんやそれ。」
山縣は本当にお前とは反りが合わんと吐き捨てて三津のもとへ向かった。
「嫁ちゃーん……。」
山縣はそっと戸を開けて中の様子を窺いながら小声で呼びかけた。
「はい,どうしました?」
三津は笑顔で山縣を迎えた。でもその目は赤くなっていて山縣は複雑な表情を浮かべた。
「大丈夫?泣いとったんやろ。」
山縣は中に踏み込んで戸を閉めてから優しく三津の頭を撫でた。
「大丈夫ですよ。私は昔から泣き虫なんです。」
そう言ってへらへら笑う三津の顔を山縣は両手で挟んだ。「傷付いたならそう言えばええやろ。何笑っとるそ?」
ぐっと顔を寄せられ真剣に叱られてしまい,三津はしゅんと眉尻を下げた。
「……傷付いたんやないんです。九一さんが言わはった事がもっとも過ぎて感情が混乱してもただけです。」
またへらっと笑ってしまったから,山縣もまた渋い表情を浮かべた。
「俺は入江の言った事に納得いかん。入江は嫁ちゃんは理解したって言いよったけど納得いかん。あと言い方も気に入らん。」
「そっかぁ……。納得いかんのですかぁ……。
あの……とりあえず座ってお話しましょうか。」
両手で顔を固定され,至近距離で見つめ合ったままでは心臓が保たない。一旦離れたい。
山縣は渋々手を離し,腰を下ろして面と向かい直した。
「まず九一さんの言い方は,何にでも首を突っ込む私の性格を考えてやと思うので私は気にしてません。」
と言った所で山縣が納得するはずもなく,渋いままの表情に苦笑いをしつつ三津は続けた。
「それと,二人の為と言いながら自分の為やって言われた事には私は納得しかないんです。
自分ではそんなつもりは一切ありませんでした。今回の件も誰も傷付かず丸く収まる方法はないんかって思ってました。」
「うん,分かっとる。嫁ちゃんは損得勘定や自分の利益の為動く子やないんは分かっとる。どっちかと言うといっつも損しちょるからな。」
『損してるつもりもないけどな……。』
と思ったが話が頓挫しそうなので胸の内にしまっておいた。
「九一さんには前にもあっちの関係はあっちで責任取らなアカンって言われてたし,私も口出していい問題やないって分かってたんです。
それでも問題を解決したいって言うのは私の欲です。おうのさんにも雅さんにも頼まれてないのに。」
山縣の表情を覗いながら言葉を並べた。口はへの字に曲がっているが胸の前で腕組みをして黙り込んでいる。
こっちの話を受け入れようとする姿勢が見えて三津はほっとして話を続けた。
「それで,九一さんにあぁ言われて何で私が問題解決にこだわったのか自分なりに理解したんです。
私は私が間違ってないと思いたかったんです。
自分の今の立場を正当化したかった……。」
また目に薄っすらと涙が浮んでしまった。それが零れ落ちる前に三津は話し切ろうと頑張った。
「丸く収めて,今の立場に居る私やからこの問題を解決出来たって思いたかったんです。
だからどっちつかずの私でいいって思いたくて……。そんな勝手な理由です。つまりは自分の為なんです。」
結局は罪悪感を捨てられない自分の為。