「さっきあいつに逝ったら吉田に埋めてくれって言われて,改めて死期が近いんかって思わされた。 いい酒持ってこいだの言うやないかって勝手に思っちょったけぇ何っつうか……。すまん……。」 山縣は目頭を押さえながら上を向いた。その姿に三津と入江は頷きあって山縣の両脇に立った。 「私も何か冗談言ってくれるもんやと思ってました。でも……高杉さんちゃんと自分と向き合ってはるんですね。 それにやっぱり二人の事は信頼してはる。だから頼みはったんですよね。逝った後の事。」 「嫁ちゃん……泣かす事言ってくれるな……。」 「泣いたっていいやないですか。それだけ高杉さんとの絆は深いんでしょ?」 「そうやけどこんな道端で泣きたないんやっ!https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/7aa31b82aef965b9216da56dcee2d06a https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/04/28/050601?_gl=1*wgs9ae*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12850318179.html !嫁ちゃん俺の涙止めてくれっ!!」 山縣は三津の方へ振り向いて思い切り抱きすくめた。泣き顔を見られないように。 耳元ですすり泣く声に,三津は赤子をあやすように背中を優しくとんとん叩いて擦った。 「おい,お前の汚い涙で三津の着物汚すなや。」 入江はそう言いながらも三津に笑みを投げかけた。こんなにも山縣が素直に感情を顕にしているのだ。ここは三津に託す他ない。 「情けねぇな……。今こんなんで本当にあいつが逝ったら俺どうなるんや……。」 山縣は怖くて堪らない。未だに信じたくない。あの高杉が本当に余命幾許もないなんて。高杉を失うのが怖い。「命が失われるのを見て平気な人なんていませんよ。しかも仲間ですよ?普通でおられんくて当たり前ですって。 皆さんは……ずっと前から何度もそれを乗り越えて来はったんですよね。頑張ってきたんですよね。」 「やけん何で泣かす事言うそっちゃ!俺は涙止めてくれって言ったそっちゃ!」 山縣は堪らず腕に力を込めた。三津は苦しい苦しいとその腕を叩いたが腕は緩まらなかった。 『あぁ……。山縣さんこれ以上私に喋らせたくないねんな……。』 これ以上踏み込まない方がいいなと判断した三津は優しく山縣の背中を撫でた。 「おい,それなら三津から離れろ。全て吐き出す根性ないならこれ以上は許さん。」 入江は容赦なく山縣の後頭部を拳で殴りつけて衣紋を引っ張った。 勢い良く後ろに引っ張られた山縣は“ぐえっ”と変な鳴き声を吐き出した。 それから乱暴に目を擦り,見てんじゃねぇとぼやいて一人で先を歩いた。 「素直やない。」 入江は小さく溜息をついてその背中について行った。三津も小走りで山縣を追いかけた。 屯所に戻った山縣は部屋に閉じこもってしまった。 「さっさと素直になって吐き出して楽になりゃええのに。まぁ三津を独占されたくないけぇええんやけど。」 『九一さんも山縣さんの事となると素直やないなぁ。』 縁側に腰掛け少し苛立ちを見せる入江を三津はふふっと笑った。 「何?」 何故笑われたんだと入江は眉根を寄せて三津を見た。 「九一さんがこうやって感情を全面に出してるんも珍しいから。よっぽど山縣さんが心配なんですね。」 「待って?私はいつも三津には感情を全面に出しとるやろ?何で伝わっとらん?こんなに好きが溢れとるのに?」 そう言って三津の腰に手を回してぐいっと自分の方へ引き寄せた。 「いやっあのそうやなくてですね?何って言うか兄上達と居た時と随分雰囲気が違うからっ。」 「そりゃ三津が本来の私を受け止めてくれるけぇ。こうなったのも三津のせいや。」 どう責任とってくれるの?と上目で甘えたように見つめられては三津はその目を直視出来ない。 両手で顔を覆ってすみませんすみませんと平謝りをした。 「お陰で私は随分楽になった。やけぇ有朋も早よ楽になりゃええのに……。」 三津が視界を閉ざしてる間に入江の腕に抱きすくめられた。 「三津にやから私も本音を言う。晋作がいつまで保つんやろうって不安や。日に日に痩せて顔色も悪くなっちょる。年は越せるんやろうかって……。」 そろそろ覚悟が必要か。入江はそう呟いて黙り込んだ。