三津の迫力に二人は目が点になった。 「九一さんは小五郎さんなら男でも問題ないんですよね?だったらやりたい全部してきたらいい。」 「待て,やりたい全部って何?」 ろくな事じゃないと察知した桂は全身から血の気が引くのを感じた。 「九一さん舌遣うのに自信があるそうで。外で体感してきたらどうです?」 「三津!他人にバラすのはいけん!」 入江も桂にそれを知られたくなくて顔色が変わった。 「いいから二人共外で頭冷やして来なさいっ!!」三津は男二人を外へ放り出した。ピシャッと玄関の戸を閉められた二人は戸の前で呆然と立ち尽くした。https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202406210000/ https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/06/21/211550?_gl=1*114mzlv*_gcl_au*MTY2OTkwNTc4OC4xNzE4OTcyMTIz https://ameblo.jp/freelance12/entry-12857026519.html 「……三津の気持ちが落ち着くまで待つしかないな。」 「そうですね……。」 二人は言われた通り頭を冷やすべく鴨川の土手に向かった。 何が楽しくて男二人で土手で肩を並べて川を眺めねばならんのだと二人して深い溜息をついた。 「で?やりたい全部ってなんだ?」 「聞かないでもらえます?それより元周様の所へお叱りを受けに行った帰りに外で三津襲いましたよね?」 「お前に答える義理はない。それより舌を使うのに自信あるのか?それで三津に何をしようとしたんだ?」 「やけん聞かんでくれん?もぉ文ちゃんのせいや……。」 入江は頭を抱えて俯いた。 「あー……全員の悪事を三津に報せてたんだったな……。」 「それです……。三津がちょいちょい切札として使ってきよるんです……。その知恵も文ちゃんのせいや……。 それはそうと慰めてくれるんですか?」 「そんな気分にもならん癖に。」 「全くです……。」 しばし無言で川面を眺めながら,二人は息ぴったりに溜息をついた。 「そういやぁ木戸さんはサヤさんが何者か知っとるんですか?あの人只者やないでしょう?」 「サヤさんなぁ……。私も初めは何も知らなかったよ。でもあれだけ何事も卒なくこなす娘さんだろう?欠点がなさ過ぎて一応身元は調べたさ。ごく普通の家庭の娘さんだった。」 「あれで普通?」 「家柄はね。ただ家族で厄介事があってね。」 「あー本人から過去にちょっとあったとは聞きましたけど内容までは……。」 桂はその“ちょっと”を知っているようだ。それを教えてもらえればモヤモヤの一つが解消する。 「彼女には姉君が居てね。嫁ぎ先で赤子を道連れに自害してる。」 「……原因は?」 「夫の女絡みと暴力で。」 「男が嫌いってそう言う事かぁ……。やけぇ女を泣かす男には容赦せんって事ですね……。」 そこから推測するにサヤは姉と仲が良かったんだろうなと入江は思った。 「そう……。その男が受けた仕打ちがね姉を奪われたサヤさんの真骨頂だよ……。」 「えっ?」 その件で男嫌いになった。それで終わりではないのか?入江はごくりと唾を飲んだ。この先を聞いていいものかとさえ思った。野生の勘だ。 「彼女はね……姉君の夫の仕事関係,交友関係全てを調べ上げてだね……。立派に復讐を成し遂げてる……。一人で……。」 「間者紛いの事が得意なの納得しました……。」 そして気になるのは一人で立派に成し遂げたその復讐内容だ。「手を血に染めたりはしてないから安心して聞いてくれ。」 「復讐って時点で安心も何もないですがね。」 しかも過去に“ちょっと”のちょっとが全然ちょっとじゃない。 「簡単に言えばその男から生命以外の全てを奪ったんだよ。 それには緻密に綿密に長い時間を費やしたと思うよ。」 「一人でやってのけるんですからそりゃそうでしょうね……。 おまけに今も平然と暮らしてるあたり,その男はサヤさんが仕掛けたのにも気付いてないのでしょう。」 「だろうね。」 「女って怖い……。」 入江は身を震わせた。だがサヤはそれだけ姉が好きだったんだとも理解した。 「だから私らも気を付けないとね……。」 「そうですね……サヤさんは三津の味方や言うとりましたんで……。」 それなのに三津を怒らせてしまったのを猛省した。これがサヤに知れたらその男と同じような仕打ちを受けるのではと戦々恐々。 「いっ……命は助かりますよね?」 「流石にそれは三津が泣くだろうからないと思ってる……。だが命はあっても色んな生命線は絶たれると思うよ……。」 「待って間接的に去ねと言われてる!?」