現にそういう方と恋愛や結婚している方も、たくさんいらっしゃいます」
「でも男性と一対一で接している女性が恋人や妻だとすると、不安になりますかね」
「それは、各々によるのかもしれませんね。……どうしたのですか?そのようなことを、男性から言われたのですか」
ひゐろは、黙ってうなずいた。https://lefuz.pixnet.net/blog/post/154283518 https://debsy.e-monsite.com/blog/--1.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/aeb1bf13-590e-8643-462d-c80f25272bab/sfXjsz4IRshuHMVvSCibPeAAz8D3xuqs8HmaiPl9biPjlMJCk2moFXGMCg
「相手はあなたのことを心配したり、お客様に妬いたりしているんでしょうね」
「……そうかもしれません」
「そのような相手の気持ちは恋愛を良い方向に導くものでもあり、悪い方向へ導くものでもあります。まずはオートガールをしているあなたを、信用してもらうよう心がけてみてはいかがですか」
「信用してもらうことですか」「恋愛や結婚は、まず信頼があってこそです。それは、お互いの言動次第だと思いますよ。信頼を生むのも、失くすのも」
「そうですね。でも言動って、難しいですね。相手が曲解することもあるでしょうし」
「おっしゃる通りですね。曲解されることもあるので、言葉選びは慎重にならないといけません」
「よくわかりました。ありがとうございます」
ひゐろには、代書屋のアドバイスが腑に落ちた。
親には内緒でオートガールをしているものの、真面目に働いている。
それに、孟さんに包み隠すことは何もない。
自信を持って伝えようとひゐろは思った。
仕事を終え、十七時に時計台へ向かうと、孟が待っていた。
「……お疲れ様。いっしょに帰ろう」
孟は手を差し出し、ひゐろを車に迎え入れた。
大きなその手の感触で、ひゐろの胸はときめいていた。
車が出発すると、ひゐろが切り出した。
「孟さん、私のオートガールの仕事なんだけれど……」
「……はい」
「運転手は、男性がほとんどです。しかも、二人きりになります。
けれど勤務中は昼間で、夕方には孟さんと帰れます。必ず帰るようにします。これまでもそうでしたし、これからもそうです。だから、心配はいりません。
どうか私を信じてください」
ひゐろは、そう告げた。
「男性と二人きりで過ごすということはとても気になることだけれど、
こうして話してくれるひゐろさんを、僕は信じるよ」
孟は笑顔を見せた。
「ありがとう、孟さん!」
孟とひゐろは、帰宅の途についた。「それにしても、暑い日が続いているな。今度、海水浴に家族で行くか」
であおぎながら、三吉が朝食の準備をするひゐろに話しかける。
「でもお父様も重蔵兄さんも、海水浴には行かないでしょう?」
と茶碗を並べながら、ひゐろは答えた。
「まぁ子どもの頃のようには、いかないか。話によると、湘南の海岸は大賑わいのようなんだが……」
「海水浴も行くと、楽しいでしょうけどね」
ひゐろは、ちゃぶ台を拭きながらそう返した。
「……ところでひゐろ。お前、孟さんにお迎えに来てもらっているらしいじゃないか」
三吉の言葉に、ひゐろは頬が赤くなる。
「夕刻は、孟さんが息抜きをするちょうど良い時間帯なんですって」
「兄が二人いるにもかかわらず、孟さんに行かせるとはね。父さんも憎いよね。きっとひゐろを、嫁がせるつもりだよ」
「……もう!三吉兄さんたら、何を言っているの!」
ひゐろは着物の袖で顔を隠し、居間を出ていく。
その姿に、三吉は大笑いしている。
居間を出ていくひゐろと、居間に向かおうとする三重吉が廊下ですれ違った。
「ひゐろ。最近は孟くんが送ってくれるから、以前より早めに帰ってくるようになったな」「お父様の車でお迎えに来てくださるので、帰らざるを得ません!」
ひゐろは、語気を強めた。
「俺の車の威力はすごいものだな」
そう言って三重吉は笑った。
「勉学に勤しんでいる中、迎えに行ってくれるんだ、孟くんに、感謝するように」
ひゐろは、うなずいた。
朝食をすますと、ひゐろは銀座に向かった。
盛夏になり、紗の着物を着ていても汗がじんわりとんでくるのがわかった。
例年に比べると、今年の夏は暑いなとひゐろは思った。
銀座の大通りに出ると、散水自動車と馬車、手車が目に入る。
東京市内では、一斉に水撒きを行っているようだった。