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その事実を思い返した時

その事実を思い返した時、喜平次はこの僅かな時間の中で全てを察した。 自分たちがここへ招かれたのも、道利が刀を置くように仕向けたのも、この手厚い持て成しも、何もかも自分たちを始末する為の義龍の謀(はかりごと)。 父が留守の時を狙ってわざと… そう思っている間に、弘就自慢の太刀が再び空を切り、喜平次の肩から腹部にかけてシュッと振り下ろされた。 殆んど即死であった。 しかし喜平次の身体は、無くなった意識とは関係なく、何とか生きようと小さくもがき続けていた。 やがて血で真っ赤に染まった自分の手を、弘就に向けて弱々しく伸ばし── https://plaza.rakuten.co.jp/carinacyril786/diary/202407220000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/09c6271bfc6d70babb98a387eaf3f824  https://ameblo.jp/johnsmith786/entry-12860912409.html「やめよ!!そのような生々しき話、聞きとうない!」 濃姫はふいに大声を張り上げて、委細を語る三保野の次なる言葉を弾き飛ばした。 三保野は「お許し下さいませっ」と慌てて平伏したが、濃姫はそれすらも受け入れ難いと言わんばかりに、信長の身に激しく取りすがった。 やや興奮状態にある妻を宥めながら、信長はまたチラと三保野を一瞥すると 「して、義兄殿はそれから如何なされたのだ?」 自分までもが状況を知らぬ訳にはいかぬと、先を促した。 「…はい。弟君様が亡くなられたのを確認なされた義龍様は、時を空けることもなく直ちに山下におられる道三様へ、これらの次第をご報告あそばされた由にございます」 「何と、自ら親父殿に伝えたとな!? それはそれは…、さぞや親父殿も仰天なされたことであろうのう」 信長が他人事のように呟いているのを、濃姫は彼の腕の中で、徒ならぬ心持ちで聞いていた。 「それから?」 「道三様はすぐに臣下に命じて法螺貝(ほらがい)を吹かせると、軍勢を集めるなり、四方の町外れから火を放っていかれたのでございます」 「城下の町々を焼き尽くされた訳じゃな?」 「御意にございます。稲葉山城をはだか城同然になされたそうでございます」 「して、その後親父殿は?」 「火煙に紛れて城下から逃れられ、そのまま長良川を越えて、山県の大桑城へと逃れた由にございます」 「ならば、親父殿はご無事なのじゃな?」 「はい!掠(かす)り傷一つないとのことにございます!」 三保野がやっと笑顔を見せると、濃姫も軽く信長の胸の上から顔を離し「…良かった…」と万感の思いで呟いた。 弟たちの訃報に加え、父親の訃報まであったのでは、とても立ち直れないところであった。 父親まで──… 次の瞬間、濃姫はハッとなって三保野に目をやると 「母上は…!? 母上は如何なされたのじゃ!」 小見の方の安否はどうなのかと、必死の形相で訊ねた。 三保野の口元に優しい笑みが綻ぶ。 「ご安堵召されませ、姫様。お方様もご無事にございます」 「無事…とな」 「はい。道三様のご命令で、一先ず常在寺(じょうざいじ)の方へご避難あそばされました。笠松様以下、おなごたちもそれに伴って城内から脱出なされたとの報にございます」 「まことなのじゃな!?」 三保野は深く頷いた。 「義龍様が標的はあくまでも道三様お一人。おなごたちには一切手は出さぬようにと、義龍も事前にお達しなされていたそうにございます」 「……何と…何と嬉しや」 父母の無事を知った姫の瞳に、うっすら涙が滲んだ。 二人が生きてくれている。 ただそれだけのことが、今の濃姫にとっては至極の喜びであった。

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