義龍が長良川の南岸に向かって軍勢を出したとの報を受けた道三が、それに応じて鶴山を下りたのは翌二十日の辰の刻(午前8時頃)であった。
そのまま長良川へと進軍した道三勢は、北岸に移り、義龍勢と対峙した。
緒戦は、義龍側の竹腰道鎮率いる一隊六百名ほどが円陣を組む形で長良川を押し渡り、道三の本陣へ迫り来て、旗本に斬りかかった。
両勢は入り乱れながら戦ったが、ここでは道三の的確な指揮が功を奏し、敵勢は敗走。
見事 道鎮を討ち取ったのである。
この折、道三は道鎮を討ち取って満足したらしく、床几(しょうぎ)にドンと腰を据え、母衣(ほろ)を揺すって得意になっていたという。https://mathewanderson.e-monsite.com/blog/--3.html https://www.evernote.com/shard/s514/sh/2a0ff095-4a63-123a-2ec0-ba68dabd213b/JDIE5ZFtQDucT1xT-uinHZ2trqfr3mgFfNV-h-aYtfFpWpxLj4rp8Fxq-g https://blog.udn.com/a440edbd/180844578
「大殿、この勢いであちらの軍勢を一隊一隊蹴散らして参りましょうぞ!」
「戦場(いくさば)においては日々の鍛練と実績がもの言うのだということを、数ばかりが頼りのあの謀反者らにとくと見せつけてやりまする!」
「使者の話が確かならば、程なく信長殿が手勢を率いてこちらへ参上あそばされるはず!それまで何とか我らだけで凌ぎましょうぞ!」
重臣たちは期待に胸を張って言ったが、信長云々に関しては道三も頑なだった。
「いいや、婿殿の助けは不要じゃ。この戦、儂は尾張の者共らを一人(いちにん)足りとも入れるつもりはない」
皆々の当惑の視線が、一点に道三へと注がれる。
「しかしながら大殿。今は凌ぎ申したが、義龍様が残る数多(あまた)の軍勢を率いて押し寄せれば、我らとてどこまで持ちこたえられるか分かりませぬ!」
「左様。信長殿がいなければ、万一の折、大殿の尾張亡命を手助け出来ませぬ!」
道空、丹後らが必死で説得にかかるも、道三はその太首を左右に振り続けた。
「この期に及んで亡命など考えてはおらぬ。どうせいずれ死する時が来るのであれば、
儂は今、この戦場で潔く散りたい。土岐氏を美濃から追いやった非道な男として死ぬことが、
儂があの愚息にしてやれる、最初で、そして最後の……」
「恐れながら申し上げます!!」
すると、道三の言葉を遮るように一兵が荒々しく走り来て、一同の前で地に片膝をついた。
「斎藤義龍様、只今数多の軍勢を率いて川を渡り、こちら向かって来ているとの報にございます!」
「何と、義龍が自らか!?」
「は!竹腰勢の敗走を耳にされ御焦虜に駆られたご様子。自ら指揮を取られ、
大殿の首を必ずや我が手で取ってみせるなどと、大言壮語を吐いておられる由にございます」
その刹那、道三はあっと驚いたような表情を浮かべると
「…義龍……。無能な臆病者とばかり思うておったが、どうやら、あやつの器量を見誤っておったようじゃな」
何とも勇ましいものを見るような目付きをして、口の両端を緩やかにつり上げた。
「皆々、聞いての通りじゃ」
道三は、居並ぶ重臣たちの強張った面を一頻りに見渡すと
「これより義龍勢と対峙致すが、前々から申していたように、これが儂にとっての最後の戦となるやも知れぬ。
天が我が味方に付き、思いもよらぬ勝利を手にするか。或いは誰もが予測しておるように、死して地を汚すことになるか……今はまだ分からぬ。